134話:翌朝の出発と遭遇
翌朝、夜明け前の5の刻に、調査部隊は移動を開始した。まだ薄暗い空に、リュウ・アケミが全体に声をかける。「みんな、出発の時間だ!準備はいいか?国境を越えて、いよいよ任務が始まる!」
参加者たちは、一斉に馬にまたがり、出発の準備を整えた。馬の蹄が地面を踏みしめ、部隊は進み始めた。まだ霧が立ちこめる中、道を進んでいく。
「ここから先、毒の沼があるはずだ。前回の調査で焼き払われたという話もあるが、念のため注意しながら通るように。」リュウが前方を見つめながら話した。「焦げ臭いにおいが漂っているが、毒の臭気は感じられない。」
部隊は、焦げた臭いが漂う中、慎重に進んでいった。毒の沼の近くを通過し、かつて焼き払われたとされる地域を通る。周囲には、かつての村の残骸や、荒れ果てた土地が広がっていたが、人の気配はまったくなかった。
薄明りが広がるころ、突然、遠くの丘の上にグリムドッグの姿が現れた。一頭がじっとこちらを見つめていた。その姿はすぐにメンバーたちの目を引き、緊張感が広がった。
「グリムドッグだ!」マーク・ドレイクが声を上げた。
エリス・グレイがすぐに弓を構え、狙いを定めた。「少し距離があるけど、射貫くわ。」
エリスの弓から矢が放たれると、瞬時にグリムドッグが倒れた。周囲には静寂が戻り、部隊のメンバーはほっとした表情を見せたが、リュウは眉をひそめた。
「一頭だけというのはおかしいな。」リュウは言った。「グリムドッグは通常、群れで行動するはずだ。これが何かを示唆しているかもしれない。」
「群れとはぐれたのか、近くに集団がいるのかも。」シルヴァン・ローレンスが言った。
その時、エリスが気が付いた。「おそらく、このグリムドッグは偵察をしていたのかもしれないわ。斥候として派遣された可能性が高い。」
「そうか。なら、警戒を強める必要があるな。」リュウはすぐに全体に指示を出した。「周囲警戒!少しずつ進むぞ!」
部隊は再び進行を開始し、周囲の警戒を強化した。しばらく進むと、緩やかな丘の稜線から、さらに獣の集団が姿を現した。エリスの目が鋭く反応し、手にしていた弓を再び構えた。
「ざっと見て、10頭は見えるわ。」エリスが冷静に報告した。「全体が警戒態勢に入った方がいい。」
リュウがうなずき、「全員、用意!」と指示を出した。部隊は静かに、しかし緊張感を持って進み、獣の集団に備えた。丘を朝日が照らすなかで、彼らの次の動きが決まる瞬間を待っていた。