131話:実力の片鱗
訓練が終わり、部隊員たちが帰路に着く中、レンデはリリスと共に訓練場の片隅で話をしていた。そこに、第一部隊の部隊長であるカイロスが現れた。彼の厳格な顔つきが、その言葉に真剣さを伴わせていた。
「レンデ、少し時間をもらっていいか?」カイロスは静かに言った。「君がこれまでどれほどの努力をしてきたのかは理解している。しかし、出発前に君の本当の実力を見せてもらいたい。私たちは君の底知れぬ力に驚いているが、実際のところ、その真価がどれほどのものかを確認したい。」
レンデは一瞬驚いたものの、すぐにその要求を受け入れる決意を固めた。「了解しました、カイロス部隊長。どうすればよいでしょうか?」
カイロスは指を指して、訓練場の中央に設置された魔法ターゲットを指さした。「あの魔法ターゲットを目指して、君の全力を発揮してみてほしい。その力がどれほどのものか、私たちに見せてくれ。」
レンデは深呼吸をし、心を落ち着けた。周囲の部隊員たちが集まり、その様子を見守る中、レンデは意を決して訓練場の中央へと歩み寄った。彼の周囲には緊張感が漂い、部隊員たちは息を呑んでその瞬間を見守っていた。
「炎よ」
レンデは手のひらに魔力を集め、炎を呼び出す術式を開始した。
「槍に」
彼の手のひらから、赤く燃える炎が次第に膨らみ、巨大な炎の槍が形成されていった。白い光を放ち赤い火の渦を巻くその火の勢いは、熱により周囲の空気さえも歪ませるほどの熱量を発していた。
「これが、私の全力です。」レンデは静かに呟きながら、炎の槍を高く掲げた。
カイロスとリリスは、その壮大な光景に目を奪われていた。レンデが炎の槍をターゲットに向かって振りかざすと、炎の槍は疾風のように空を切り、魔法ターゲットに向かって一直線に飛んでいった。その一撃は、目にも留まらぬ速さでターゲットに命中し、強烈な爆発音と共にターゲットが燃え、さらに後方の魔法障壁の壁を破壊しつくした。
さらに、炎の勢いは止まることなく、ターゲットの周囲に焼け跡を残した。レンデはその後、冷静に炎を収束させ、魔法を終了させた。ふたりはその壮絶な光景に驚嘆し、しばらく言葉を失っていた。
カイロスは満足げな表情でレンデを見つめ、深く頷いた。「素晴らしい。これほどの力を持っているとは、実に驚きだ。君の実力は本物だと確認できた。これで、きみが調査部隊への出発に対する自信について、我々も確信が持てた。」
カイロスは一歩前に進み、レンデの肩に手を置いた。「だが、これだけの力を持っていても、任務の過程で予期しない困難が待っているかもしれない。それでも、君が持っているのは単なる力だけではない。君の強い意志と心があれば、どんな困難も乗り越えられると信じている。自分を信じて、どんな状況にも冷静に対処してほしい。」
彼は一瞬、レンデの目を見つめ、その目には温かい激励が込められていた。「君がどれほど優れていても、無理をせず、仲間との連携を大切にしながら、自分を守ってほしい。君の安全と成功を心から願っている。」
レンデはカイロスの言葉に深く感謝し、力強い決意を新たにした。「ありがとうございます。部隊長の言葉を胸に、全力を尽くし、任務に挑みます。」
「レンデ、すごい魔法だったね!」リリスの声には興奮と賞賛が混じっていた。「あの炎の槍、すごく迫力があって驚いたわ。ところで、あれをあと100回ぐらいできるの?」
レンデは少し驚いた様子を見せたが、すぐににっこりと笑った。「100回もですか?それはさすがに難しいかもしれませんが、少なくとも何度かは繰り返せると思います。」
リリスは目を輝かせて、レンデの答えを聞いて満足げに頷いた。