13話:新たな誕生の兆し
輪廻の渦の中で、ヘルミオ・カスティウスの魂は青白い光の中を漂い続けていた。無限の空虚の中で、彼は過去の思い出を静かに反芻し、未来への期待と共に、輪廻の流れに身を任せていた。その意識は、光の中で揺らめくように、安らぎと共に新たな誕生へと向かっていた。
だが、ある瞬間、ヘルミオの魂は突然の感覚に襲われた。彼の周囲の虚無が急にざわめき、渦巻く光の中にひとつの強い引力を感じた。それは、彼自身が求めていたものとは違うが、確かに存在する力の強い引き寄せだった。彼の意識がそれに引かれていく感覚が強まり、輪廻の渦がその力に反応していた。
その引力が強まる中、ヘルミオは次第に意識が一点に集中するのを感じた。そこにあるのは、現世のある魂の波動だった。彼の魂がその波動と共鳴し、渦の中で引き寄せられていく。光の渦が徐々に濃くなり、彼の周囲には一つの魂の存在がはっきりと浮かび上がってきた。それはまだ未熟で、強い欲望と葛藤を内包する魂だった。
ヘルミオの魂はその魂と直接繋がり、共鳴を始めた。周囲の光が急激に明るくなり、ヘルミオはその魂の感情や願望を感じ取った。その魂は力を求め、現世の複雑な状況に対して苦しんでいた。ヘルミオの意識は、その苦しみと欲望に対する理解を深め、同時に彼の自身の内なる力と共鳴していた。
「この魂には、強い力を求める渇望がある…」
ヘルミオはその魂が、現世でどのような状況にあるのかを感じ取った。魂の持ち主はまだ12歳の少年で、名前はレンデ・バラシュ。レンデは強い意志を持ち、周囲の困難に立ち向かおうとする姿勢を持っていたが、その力不足に苦しんでいた。ヘルミオはその姿に共感し、彼の過去の経験から、少しでも役立てるのではないかと考え始めた。
次第に、ヘルミオの魂はレンデの魂と一体化していった。光の渦がさらに強く回転し、ヘルミオの意識はレンデの記憶や感情と融合していく。過去の魔法使いとしての知識や経験が、未熟な少年の魂に流れ込んでいった。レンデの内面には、強い力を求める願望と共に、ヘルミオの意識も溶け込んでいった。
「これで、私は新たな形で現世に戻るのだな…」
ヘルミオの魂は、徐々にレンデの魂に溶け込みながらも、自身の意識を維持していた。その融合は、力を求めるレンデの渇望に応える形で、ヘルミオの知識と経験を新たな形で生かすものとなるだろう。彼はその未来に対して希望と期待を抱きながら、新たな生命としての誕生を迎えようとしていた。
光の渦が急速に収束し、ヘルミオの魂はレンデの体内に完全に統合されていった。渦の明るさが一層強くなり、次第に周囲の光景が変わっていく。彼の意識は、今や少年の体の一部として、新たな人生を歩む準備を整えていた。
その瞬間、光が一気に収束し、ヘルミオの魂は現世に戻ったのだった。