125話:力を示す時
翌日、レンデは騎士団の詰め所を再び訪れ、アレスから案内を受けて魔術部隊の部隊長メロドールに紹介された。詰め所の内装は依然として整然としており、騎士たちの活動が活発に行われている様子がうかがえた。
メロドールは、貫禄のある姿勢でレンデを迎え入れた。彼は、身につけている衣服や装飾品からもその高い地位が伺え、レンデに対して少し高慢な態度を見せながらも、冷静に話し始めた。
「レンデさん、ようこそ。ここは魔術部隊の一部であり、RANK4以上の精鋭たちが揃っています。特にRANK5の実力者たちが多く、非常に厳しい部隊です。」メロドールは言葉を続けた。「さて、君の実力がどれほどのものか、実際に見せてもらいましょう。」
レンデは少し緊張しながらも、その挑戦を受け入れる覚悟を決めた。メロドールに連れられて、魔術部隊の実戦訓練所へと向かった。訓練所に到着すると、そこで待機していた小隊長が目に入った。この小隊長はRANK5の実力者で、威厳のある風格を持っていた。
「この小隊長が相手になる。」メロドールが指示した。「彼の実力を十分に体感し、君の力を見せてみるがいい。」
小隊長は冷静にレンデを見つめ、やや挑戦的な態度で言った。「君の力を試すのは悪くないが、私の実力を舐めてはいけないよ。全力でかかってこい。」
レンデは深呼吸をし、自分の心を落ち着けた。ヘルミオとの瞑想でイメージした戦いを思い出し、実戦に臨む準備を整えた。瞑想で描いた戦いのシナリオを頭の中で反芻し、火と風の魔法を組み合わせた攻撃や防御のイメージをしっかりと固めた。
訓練場には、戦いの準備が整ったレンデと、冷静な小隊長が対峙していた。レンデは小隊長に対して、迅速かつ正確に対応することを心がけ、実戦訓練の中で自己の限界を試す決意を新たにした。
「それでは、始めましょう。」メロドールが合図を送り、訓練が始まった。
レンデが訓練場の中央に立ち、向かい合う小隊長ジアモの姿をじっと見つめていた。ジアモは冷静に構え、挑戦的な笑みを浮かべながらレンデに向かって言った。「さあ、打ってこい。どんなものか、見せてもらおう。」
レンデは少し深呼吸し、内に秘めた力を集中させる。手のひらに集めた魔力が、徐々に熱を帯びてきた。彼の指先から、燃え上がる火の魔法が放たれる。火の矢のように飛び出したそれは、ジアモに向かって一直線に進む。
しかし、ジアモはその火の魔法を軽々と弾き返すように、手を一振りした。魔法は空中で弾かれ、訓練場の結界に当たって激しく爆発した。結界は強固で、火の魔法の衝撃を受け止めると共に、周囲に飛び散る火花が宙を舞う。結界がしっかりと機能しているのが確認できる中、ジアモは鼻で笑いながら、軽く肩をすくめた。「そんなもんか?」
レンデはその反応に内心の焦りを感じながらも、冷静さを保つことに努めた。彼は更なる力を込めて、次の技に移る決意を固めた。「では、本番いきます。」レンデの声は決意に満ちていた。
彼は魔法の構えを取り、火の魔法を発動する。次に、水の魔法を組み合わせ、訓練場に濃霧を巻き起こす。その霧が立ち込める中で、氷の魔法を使い、場の温度を一気に下げる。瞬く間に、霧の中に氷の結界が形成され、さらに氷の槍が次々と作り出された。
「これがどうだ?」レンデが問いかけるように、氷の槍がジアモに向かって飛んでいく。その威力はかなりのもので、霧の中で正確に目標を捉える。
ジアモは霧と氷の中で姿が見えにくくなりながらも、冷静に対応していたが、突然、氷の槍の一撃が彼の身体に直撃した。凄まじい衝撃により、ジアモの姿が氷の崩れた中から現れ、彼の表情は驚きと痛みを交えたものになっていた。
氷の中から顔を出したジアモは、傷だらけでその場に崩れ落ちた。彼の動きが鈍くなり、戦闘能力を失っているのが明らかだった。レンデは一瞬、戦闘の終息を感じ、息をついた。
メロドールが一歩前に出て、訓練場の結界を解除しながら、冷静にレンデを見つめた。「なるほど、君の実力は本物だ。ジアモ、小隊長としての誇りが傷ついたかもしれないが、君の力を見せてくれたのは評価に値する。」
ジアモは痛みをこらえながらも、苦笑いを浮かべた。「予想以上だった。君の力、確かに凄い。見込み違いをしたかもしれないな。」
レンデは胸の内で喜びと安堵の感情が交錯するのを感じながらも、冷静に一礼した。「ありがとうございました。これからも精進します。」




