122話:ドゥームウルフ
ドゥームウルフが左の前足を振り上げた。その動作はまるでスローモーションのように、壮絶で迫力満点に見えた。鋼のような足が空中に浮かび上がり、次に振り下ろされたその瞬間、激しい風圧が周囲を吹き抜けた。
「盾を突き出せ!」アレスが叫び、騎士団の一人が盾を前に突き出したが、ドゥームウルフの一撃はその盾を簡単に弾き飛ばし、騎士は地面に激しく転がった。騎士は息も絶え絶えになり、動かすことができない状態でうめき声を上げた。
レンデは転がる騎士を目の端で追いながらも、ドゥームウルフから目を離せなかった。自身に言い聞かせるように、深呼吸をし、心を落ち着ける。彼の内なる魔力が高まり、集中力を持って防御魔法を発動した。全身を包む防御のバリアが強化され、精神的な攻撃にも備えることができた。
「落ち着け、自分を信じろ。魔力を練るんだ。」レンデは心の中で繰り返し、自らを鼓舞する。調査員全員に精神防御を張り、共にこの危機を乗り越える準備を整えた。もし一人で無理なら、全員の力を集める覚悟を決めた。
仲間が次第に立ち上がり、戦闘の意識を取り戻すのを待ちながら、レンデは次の魔法の準備を進めた。
再びドゥームウルフが右の前足を左へ振る。2人の調査員が弾き飛ばされる。血が飛び、転がっていく体。あれは助からないだろう。現実を前にして、なぜか少し心が冷静になった。
レンデは杖を握った手に魔力を圧縮し、炎を集める。その熱を感じながら、巨大な火の玉が形成されていく。彼の集中力が高まる中、火の玉が完成し、一気にドゥームウルフに放たれた。
火の玉はドゥームウルフに直撃し、魔獣の巨体が一瞬炎に包まれる。今度は明らかにダメージを与えた様子が見られ、ドゥームウルフが吠えた。残った2人が弓を構え、2人が剣で魔獣の足に切り込みを入れようとする姿が見えた。
レンデは火の魔法の準備を続ける一方で、風の魔法も同時に準備し始めた。彼の魔力が炎と風の両方に分配され、二つの強力な魔法が同時に発動する準備が整った。
レンデは集中力を高め、大きな魔力を引き出して、風の魔法を発動させた。彼の手から放たれた風がぐるりと旋回し始め、強力な渦を作り出した。その渦はまるで巨大な竜巻のように、周囲の空気を巻き込みながら急激に成長していく。
次に、レンデは火の魔法を加えた。炎の力が風の渦に取り込まれ、火の竜巻が形成される。燃え上がる炎が渦の中心で激しく旋回し、赤く煌めく熱波がその周囲を包み込む。火の渦が形成されると、その熱と力が周囲の空気を震わせ、ドゥームウルフに向かって突進する準備が整った。
レンデは、火と風の渦を一気にドゥームウルフに叩きつける決意を固め、全身の魔力をその一点に集中させた。火の竜巻がドゥームウルフの巨体に向かって放たれ、猛烈な熱と風圧が一体となってその魔獣を包み込んだ。
火の渦がドゥームウルフに触れると、魔獣の体が炎に包まれ、猛烈な熱でその毛皮が焦げ始めた。風の力が炎を一層強化し、渦の中心で燃え上がる火がドゥームウルフの体を容赦なく焼きつくす。炎の渦がその巨体を巻き込みながら、ドゥームウルフの動きを鈍らせ、恐怖と痛みの中で暴れはじめた。