120話:炎の結界と影の獣
夜の闇が深まる中、野営地の周囲に不穏な気配が広がり始めた。騎士団の二人、リナとアレスが、獣の気配とその異様な動きから、次第にグリムドッグと呼ばれる獣の存在に気づいた。獣たちは不気味なうなり声を上げ、草むらの中でじわじわと接近してきた。
「グリムドッグだ!あの獣たちは非常に危険だ。」リナが顔をしかめて言った。「早く対策を立てないと!」
レンデはすぐに動き、急いで杖を取り出し、野営地の四隅に突き立てて火の結界を張り始めた。火の魔法を使い、地面に三本の火の帯を走らせ、野営地を四角形に囲むように展開した。炎が赤く輝き、結界が形成されると、周囲の気配が一層不穏になった。
「結界を張ったから、これで少しは安全が確保できるだろう。」レンデが息を整えながら言った。(この調査員には私だけが魔法使いだから、できる限り守らないと。)
近づく足音と、二つの青い目が結界の外からこちらを見つめていた。隊員たちは弓を引き絞り、緊張の面持ちで獣たちの出現を待ち構えた。
「来るぞ!」アレスが鋭い声で叫びながら、矢を放った。グリムドッグたちが火を越えて一斉に飛びかかり、野営地に襲いかかってきた。隊員たちは連携して弓矢を射ち、獣たちを次々と射貫いていく。
(火よ、発動!)レンデが杖を振り上げ、火の玉を放つと、結界の外で待ち受けるグリムドッグたちが炎に包まれていった。渦を巻くような火の魔法の熱が獣たちを焼き、周囲に焼け焦げた匂いが立ち込めた。
獣たちが次々と倒れ、約20匹ほどが地面に転がる中で、キャンプの安全が徐々に確保されていった。各隊員が一人あたり2~3匹を撃退し、残ったグリムドッグたちが次第に減少していった。ようやく、獣たちの襲撃が止んだかに見えた。
しかし、安堵の瞬間も束の間、森の奥からさらに大きな影が現れた。巨大な犬か狼のような姿をしたそれは、他のグリムドッグたちとは比べものにならない威圧感を放っていた。
「見ろ、あれが…!」リナが声を震わせて言った。「ドゥームウルフだ!こいつはただの獣じゃない、非常に危険な魔法を使ってくる!」
アレスが冷静に指示を出した。「全員、警戒を強めろ!ドゥームウルフは強力な魔法を使う。近づくと危険だ。全力で守る準備をしろ!」
隊員たちは急いで防御態勢を整え、各自の武器や魔法の準備を進めた。レンデは再び火の魔法を練りながら、ドゥームウルフに備えた。炎の結界と共に、彼らの周囲には強い緊張感が漂い、次なる戦いの準備が整っていった。