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12話:輪廻の彼方に

空は沈黙し、星々がひっそりと輝く中、ヘルミオ・カスティウスの魂は暗闇を漂っていた。彼の体が静かに息を引き取ったその瞬間から、時間も空間も彼にとって無意味なものとなり、広大で冷たい虚無の中に浮かんでいた。彼はこの無限の暗闇の中で、自分の存在を確かめるためにさまよっていた。


「ここは…どこだ?」


そのつぶやきは、かつての威厳を保ったまま響いたが、虚無感が漂っていた。彼は自分の手も足も、体さえも感じることができず、ただの意識としてこの不明の領域に漂っていた。空虚の中、彼の心は孤独を感じていたが、ふと気づくと、周囲に小さな光点が浮かんでいることに気づいた。それは、星の輝きがかすかに漏れているように見えた。


「星々の光…これが私に何かを伝えているのだろうか?」


彼の周囲には、ただ無限の空虚が広がっているだけで、時折、青白い光の波がその虚無を照らしては消えていった。その光がヘルミオにとってはどこか馴染みのあるもので、彼の記憶の奥底に眠っているようだった。


「これは…輪廻の流れか?」


彼の古びた杖と色あせたローブが、過去の彼の姿を浮かび上がらせる。だが、それらは今やただの記憶の断片に過ぎなかった。彼は、その夜に体験した冷たい風と、暗殺者の手による剣の痛みを思い出した。


「過去の自分は、こんなにも孤独だったのか…」


彼の心には、過去の情熱と栄光を胸に抱いていた自分が今やどう感じているのかが渦巻いていた。生きることに疲れ、過去の栄光を捨てて穏やかな生活を望んでいた自分が、どれほど矛盾していたのかを実感していた。


「これが…私の選んだ道だったのか?」


突然、青白い光が強くなり、周囲の虚無が変わり始めた。彼はその光の中に引き込まれていく感覚を覚えた。光が彼の周囲の暗闇を払い、彼の意識を包み込む。その光の中に、星の輝きがほんのりと感じられ、彼はそれが未来へと続く新たな道を示していると感じた。


「この光が、私を新たな輪廻へと導くのだろうか?」


その瞬間、彼は自らの過去の光景を一つ一つ思い出していた。若き日の冒険、仲間たちとの喜びと悲しみ、そして今はただの記憶となった彼の知識。全てがこの光の中で溶け合い、彼の存在が新たな何かへと変わりゆく感覚を与えた。


「星の輝きが、私に希望を与えているのか…」


光の中で、彼の心は少しずつ安らいでいった。彼は過去の悔恨や後悔を解き放ち、未来に対する希望とともに、新たな存在として生まれ変わる準備を整えていた。彼の意識は、静かに、そして確実に、輪廻の波に溶け込んでいった。


「私の旅は、ここで終わるのではない…」


無限の光の中で、彼は穏やかな表情を浮かべながら、未来の世界に向けて旅立っていた。星々の輝きがその先を照らし、彼の新たな旅立ちを祝福しているかのようだった。

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