119話:迫る夕刻
村の静寂の中で、レンデは焼け焦げた地面に残された死体を調べ始めた。彼が見つけたワイトの防具には、ルーメリアの刻印が施されているのを確認し、その異常さに驚愕した。焦げた死体は、かつての調査員だったのだろうか?その防具には、彼らがかつて着用していたものと似た特徴があった。
レンデは深い息を吐き、ヘルミオに心の中で問いかけた。「ヘルミオ、この防具、ルーメリアのものだ。何か高位の魔法使いが関与している可能性があるんじゃないか?」
ヘルミオの冷静な声が心の中に響く。「そうだ。これはただの自然の変化ではなく、魔法の力が影響を与えている証拠だ。高位の魔法使いがこの村に関わっている可能性が高い。」
レンデはその言葉を受け止め、急いでリサに報告することにした。「リサさん、この村での状況は異常です。ワイトの防具にルーメリアの刻印がありました。おそらく高位の魔法使いが関与している可能性が高いです。もしその存在と遭遇すれば、私たち全員が危険にさらされるかもしれません。」
リサはその話をじっと聞き、考え込んだ後、決然とした表情で答えた。「分かった。危険があるのは承知しているが、調査を進める必要がある。次の村に進むことにしましょう。」
レンデはリサの決断に納得し、隊を再び街道へと向けた。街道に戻りながら、次の村を目指して進んでいくと、その過程でも同様の異変が見られた。村の周囲には、ゾンビやスケルトンが徘徊しており、ワイトの姿は見当たらなかった。村々の静けさが続き、住人の気配はどこにも感じられなかった。
日が傾き、夕刻が迫ってきた頃、隊は森の中で野営の準備を始めた。隊員たちは一日の終わりを迎えながら、キャンプの設営に取りかかった。焚き火を囲み、食事の支度を始める間にも、隊の皆は静かにその日の出来事を振り返っていた。
「またもやゾンビたちだったな。」アレスが火のそばに座りながら、手を振って疲れた表情で言った。「ワイトはいなかったが、これが何を意味するのか、まったく分からない。」
「どこかで魔法使いが監視しているのかもしれない。」レンデが神妙な顔つきで言った。「これまでの調査から考えるに、高位の魔法使いが関与している可能性が高い。」
リナが火のそばで手を温めながら言った。「それにしても、なんでこんなことが…村が次々とゾンビ化するのは、一体どういう理由なんだ?」
「おそらく、何か大きな陰謀が絡んでいるのだろう。」レンデが慎重に言葉を選びながら言った。「今夜は、何が起こるかわからないから、警戒を怠らないようにしよう。」
森の中での夜は静かだったが、その静けさの中には、未知の危険が潜んでいるように感じられた。隊は互いに監視をしながら、キャンプを設営し、明日への備えを整えた。
夜の闇の中、野犬とは言えない異形のグリムドッグが森を徘徊し始めていた。その獰猛な眼差しと不気味な唸り声が、静かなキャンプの空気を一層緊張させた。