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115話:不穏な前兆

城門を出てから2日が経ち、調査隊は馬に揺られながらリーヴァルト王国の勢力圏に接近していた。朝の霧が立ち込める中、隊のメンバーたちはそれぞれの役割を確認し合いながら、緊張感を保って進んでいた。空気は冷たく、景色は静寂に包まれていたが、その中には一抹の不安が漂っていた。


突然、風が吹き、かすかな異様な匂いが隊員たちの鼻をかすめた。それはどこか不快で、背筋がぞっとするような匂いだった。先頭を歩いていた騎士団員のリナが、鼻をひくつかせながら振り返った。「おい、みんな、なんか変な匂いがするぜ。気をつけろ、あれはただの匂いじゃねえ!」


その言葉に反応して、他のメンバーたちも匂いに気づき始めた。レンデもその匂いを感じ取りながら、目を凝らして周囲を見渡した。


調査隊の一人である中年の男、マルクスが声を張り上げた。「これが毒の沼の匂いだ!吸い込むと命に関わるぞ。俺の聞いた話じゃ、この辺りには毒沼が広がってるっていうから、気をつけたほうがいい。」


「毒の沼?」と、若い隊員の一人が不安げに呟いた。「それって、どれくらい危険なんですか?」


「毒の沼は、ただの沼じゃねえ。」マルクスは説明を続けた。「毒性のガスが発生するし、その水には毒が含まれてるから、触れたり吸ったりするだけで、重篤な症状が出る。時には即死することもあるんだ。」


リナが冷静に、しかし強い口調で言葉を続けた。「この匂いが漂ってきたってことは、私たちはその毒の沼に近づいてる可能性が高いわ。すぐに対策を考えなきゃな。」


アレスが、隊全体を見回しながら指示を出した。「よし、まず全員、マスクや布で口と鼻を覆え。毒ガスを吸わないようにするのが最優先だ。それから、慎重に進むぞ。」


レンデはすぐに自分の装備から布を取り出し、口と鼻を覆った。他の隊員たちもそれに従い、各自の対策を講じた。


「全員、慎重に進むぞ。」アレスが確認しながら、隊を前に進ませた。「不安な時はすぐに報告して、無理をするな。」


隊は毒の沼の臭いを避けながら、できるだけ慎重に進むことにした。空気中に漂う毒の匂いは、進むごとに濃くなり、時折風に乗って気分を悪くさせた。


毒の沼を前にした緊張感の中で、レンデは自分の心が不安と集中の狭間で揺れるのを感じていた。その時、普段は静かなヘルミオが彼の頭の中で、ささやくような声で話しかけてきた。


「レンデ…、この毒の沼、ただの自然現象ではないかもしれない。これは…毒の沼を生成する魔法の痕跡かもしれない。」


レンデは心の中で驚きと疑念を感じながら、ヘルミオの言葉に耳を傾けた。「毒の沼を生成する魔法?それって、どんな魔法なんだ?」


「そうだ…これは闇の魔法の一種で、非常に危険なものだ。」ヘルミオの声は考え込みながらも、深刻さを帯びていた。「毒の沼を生成する魔法には、毒を含んだ沼地を人工的に作り出す力がある。この魔法は、生物を徐々に浸食し、環境を脅かすものであると同時に、魔法使いの技術としてはかなり高ランクのものだ。」


レンデは頭の中でその説明を反芻し、状況を思い起こした。毒の沼はただの自然現象ではなく、強力な魔法の影響かもしれないという指摘は、彼の不安をさらに高めた。闇の魔法はルーメリアの目指す魔法技術とは対極に位置し、一般的に禁忌とされている技術である。


「この毒の沼が生成されたものであるなら、その背後にいる魔法使いや勢力は、相当な技術と意図を持っている可能性がある。」ヘルミオは続けた。「君たちが調査を進める中で、もしこの魔法の痕跡や、その生成者の手がかりを見つけたら、非常に重要な情報となるだろう。」


レンデは、ヘルミオの言葉を心に刻みながら、再び周囲を見渡した。

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