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111話:勇気あるもの募集

王都ルーメリアの中心部に掲げられた立て看板には、大きな文字で「調査員募集 報酬:金貨10枚」と書かれていた。その周りには、見物客や通行人が集まり、立ち止まって看板を見上げていた。


「またか。」一人の商人がため息をつきながら、仲間たちに話しかける。「リーヴァルト王国に調査隊を送っても、結局なにも得られないんじゃないか?」


その商人の話に、通行人たちも頷いた。「噂では、リーヴァルト王国は呪われてるとか、地中に古龍が眠ってるとか、もう何が本当か分からない。街道も危険で、特産品のチェリーや果実類が手に入らなくなったんだ。」


別の若者が興奮気味に語る。「俺の親父が言ってたけど、あの国はもう存在しないんじゃないかって。霧に包まれて、そこには何もないんだろう。」


民衆の間には、リーヴァルト王国についての恐怖や疑念が広がっていた。数々の噂が飛び交い、調査隊の募集に対する信頼は薄かった。


その夜、アーサー王は執務室で一人、深刻な表情で座っていた。机の上には、リーヴァルト王国に関する数々の報告書と地図が広げられている。彼は、無数の紙の山に埋もれているような気持ちに襲われていた。


「もう三年も経つのに、どうしてこんなに情報が得られないのか…。」アーサー王は呟きながら、地図をじっと見つめた。リーヴァルト王国の位置を示す部分が、暗黒の影に覆われたままだ。


側近のサイラス卿が静かに部屋に入ってきた。「陛下、調査隊の募集が始まりました。しかし、民衆の反応は冷ややかです。」


アーサー王は疲れた表情で振り向いた。「民衆の不安は理解できる。リーヴァルト王国の状況があまりにも不明瞭で、恐怖や憶測が広がっている。私がどうにかして状況を打破したいのに、これでは何も前進できない。」


サイラス卿は慎重に言葉を選ぶ。「調査隊が直面するリスクは確かに大きいですが、民衆の間の噂や恐怖を払拭するためには、まずは調査を進める必要があります。リーヴァルト王国の真実が分かれば、民衆も少しは安心するかもしれません。」


「それに…」サイラス卿は続けた。「戦争の賠償についても、話し合う余地がないのは痛手です。情報がなければ、交渉の材料にもならない。」


アーサー王は頷き、決意を新たにした。「そうだ、リーヴァルト王国の謎を解き明かし、国民に希望を与えるために全力を尽くさなければ。調査隊に対する支援を強化し、また新たな人材を募らなければならない。」


サイラス卿は肯定の意を示し、部屋を出て行った。アーサー王は、一人静かに残り、リーヴァルト王国の未来を思い描いた。


アーサー王は執務室の重厚な木製の机に向かって座っていたが、次第にその姿勢が崩れていった。彼は玉座へと向かい、そこに座ると深い溜息をついた。玉座の背もたれに寄りかかり、目を閉じて思索にふける。


「リーヴァルト王国…一体、何が起きているのか。」彼は自問自答した。三年もの間、情報は皆無で、王国の未来が暗雲に包まれている。商人たちの噂や民衆の不安が、彼の心に重くのしかかっていた。


「私の国が、こんなことで揺らいでいていいのか?」アーサー王は自らの無力さに苛まれた。国民の恐れや不安は、彼自身の責任でもあった。彼は国を守るべき王として、何か行動を起こさねばならないという焦りを感じていた。

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