110話:暗黒の王国
ルーメリア王国の城壁に囲まれた静かな朝、天気は穏やかで、風は心地よく吹いていた。だが、その静けさの裏には、深刻な緊張と不安が広がっていた。城内の執務室で、国王アーサー・ルーメリアは、机に広げられた地図と報告書に目を落としていた。
「これが現状報告です、陛下。」彼の側近であるサイラス卿が、慎重に巻物を広げる。サイラス卿の声には焦りが滲んでいた。
地図には、リーヴァルト王国の位置が示されていた。その地域は、かつては豊かな農業地帯であり、リーヴァルト王国の歴史と繁栄を物語っていた。しかし、今やその地図のほとんどが、暗黒の影に覆われたように見える。
「この3年間、何度も調査隊を派遣してきましたが、成果は薄い。」サイラス卿は、調査結果を指し示しながら続ける。「派遣した12回の調査隊のうち、5回が失踪し、4回はまったく成果がありませんでした。」
アーサー王は黙って地図を見つめた。彼の眉間に皺が寄る。
「3回の調査で得られた情報も、ただ不吉なものばかりです。毒の沼が発生している、街道に人通りが無い、霧の中で動物の叫び声が聞こえる…。これらの情報が示すのは、かつての平和なリーヴァルト王国とはまったく異なる状況です。」
アーサー王は深いため息をつき、窓の外に目を向けた。城内の庭が見えるが、その平穏な風景が逆に彼の心を重くする。リーヴァルト王国で一体何が起こっているのか、その原因がまったく掴めないことが彼を苛立たせた。
「王国の情報が手に入らない理由は、暗黒魔法の影響かもしれません。」サイラス卿が言った。「あの地域では暗黒魔法の影響で、自然界そのものが変わってしまっているようです。」
アーサー王はうなずき、決意を固める。彼はこれ以上の無策を許さず、リーヴァルト王国の謎を解明するための新たな策を講じる必要があると感じた。
「我々はただ調査隊を送るだけではなく、もっと深い探査を行う必要がある。」アーサー王は決然と告げた。「リーヴァルト王国の暗黒の影を振り払うために、特別な使者を派遣する。彼らには単なる情報収集だけでなく、実際に王国の内情に触れ、問題の根源を探る任務を与える。」
サイラス卿はうなずき、王の決断を受け入れた。「では、どのような者を選びますか?」
アーサー王は少し考え込み、目を鋭くした。「まずは、特異な能力を持つ者が必要だ。暗黒魔法に対抗できる力を持ち、かつ心の強い者を探してほしい。リーヴァルト王国の真実を解き明かし、国を救うために。」
サイラス卿は深く頭を下げ、王の指示を胸に刻んだ。彼はすぐに準備を進め、新たな使者を選び出すための任務に取り掛かる。