107話:竜玉の試練
火竜が倒れた後、レンデはその巨体の前に立ち、まずは竜の心臓を取り出す作業に取り掛かった。魔法で出力を調整し、火竜の体を切り裂いていく。炎のように熱い血が流れ出し、レンデの手が汚れていくが、彼は冷静さを保ち続けた。心臓を取り出し、魔法で作った器に慎重に収める。
心臓の次は、竜玉を探す番だ。火竜の体を調べながら、手のひらに収まるくらいの黒い玉を探し出した。竜玉は見つかり、目的の物が手に入ったことに安堵しながらも、作業を続ける。全体の作業は、約10分で手早く終わらせることができた。
「これで、必要なものはすべて揃った。」レンデはほっと息をつき、周囲に目をやった。火山を離れる前に、竜の死骸は火蜥蜴の餌となるだろう。レンデは心の中で決めた。竜の心臓はエリスのRANKアップの霊薬の主材料になる。
その後、レンデは体を落ち着かせるために、火山から離れた場所を探し出した。適当な場所に着くと、地面に座り込み、周りを見回す。見られているような気配はないが、戦いの余韻が体に残っている。レンデは深呼吸を繰り返し、心を落ち着けようとした。
深呼吸を何度も行い、体を整えたレンデは、ヘルミオのアドバイスを思い出す。竜玉を取り込む方法について質問したところ、ヘルミオから「胸の肌に直接当ててみるといい」とのアドバイスを受けていた。レンデは上着を脱ぎ、黒い竜玉を胸に当てると、驚くべきことが起こり始めた。
竜玉がじわじわと体に自然に埋まっていく様子に、レンデは目を疑った。慌てながらも、玉が完全に体に入り込むと、突然、体内に燃えるようなマナが流れ始めた。マナは体中を暴れ回り、レンデのコントロールを超えているようだった。体が熱く、震えるように感じ、マナが生き物のように抵抗してくる。
「どうしよう、どうしよう…」レンデは必死に魔力をコントロールしようとするが、マナは暴れ続ける。体が弾け飛ぶような感覚に、恐怖が押し寄せた。
その時、ヘルミオの声が再び響いた。「これを抑えないと、レンデの体は竜のマナで弾け飛んでしまうぞ!」
ヘルミオの言葉にレンデは焦りながらも、心を決めてさらに魔力をコントロールしようと試みた。全身に流れる熱いマナを抑え込むため、集中力を高め、心の中の冷静さを取り戻そうとしていた。
竜玉の力が強大すぎて、レンデの体はそのマナに耐えられず、体内から漏れ出しそうになっていた。
レンデは苦痛に顔を歪めながら、必死に魔力をコントロールしようとしたが、暴れるマナに押し込まれて、全く制御できない。体が崩壊しそうな感覚に、恐怖が押し寄せた。息を荒げながら、体の内側で何かが崩れ去る音が聞こえるようだった。
「どうしよう…このままでは、体が持たない…!」レンデは心の中で絶望感を募らせながら、ヘルミオのアドバイスを思い出そうとした。
「心を燃やせ!」ヘルミオの声が響く。レンデはその言葉を再び思い出し、心を奮い立たせようと試みる。
「感情をここにぶつけて、燃える感情を維持しながら、冷静な制御を行うんだ!」
その言葉がレンデの心に突き刺さり、彼は瞬時にその意味を理解した。燃える感情と冷静な制御、この二つの要素が必要だということに気づいた。激情を持って力を引き出しながらも、それを冷静に操る技術が求められているのだ。
「感情を燃やせ…そして冷静に…」レンデは自分の内なる炎に意識を集中させた。燃えるような情熱が体内を駆け巡り、それに合わせて冷静な判断力を持ってマナの流れを調整する。激しい波に翻弄されながらも、その感情を力に変えて制御しようとする。




