103話:エンバーの杖
店主は頷き、奥の棚からいくつかの杖を取り出してきました。その中には、樹齢150年の古木の枝を使った杖がありました。杖の一番上には、青白く輝く水色の魔石がはめ込まれており、それは「星のかけら」と呼ばれるものでした。杖の全体には少し古びた雰囲気があり、年老いた魔術師が持つような印象を与えていました。
「こちらの杖は『星のかけら』と呼ばれるものです。」店主が説明した。「この魔石は、古代の魔法に由来するもので、魔力の調和に優れています。」
レンデはその杖を手に取ってみましたが、その重厚感と古めかしさに少し圧倒されました。「確かに素晴らしいですが、少し仰々しいかもしれません。」
店主はにっこりと笑いながら、別の杖を取り出しました。「それなら、こちらの『エンバーの杖』もご覧ください。」店主が奥の棚から箱を取り出し、中から赤い魔石が嵌め込まれた杖を取り出しました。「この杖は『エンバーの杖』と呼ばれており、火のエレメンタルに適した杖です。魔石の赤い輝きが特徴で、活力を与える効果があります。」
レンデは『エンバーの杖』を手に取ってみました。星のかけらとは対照的に、こちらはよりシンプルで力強い印象を与える杖でした。赤い魔石が炎のように輝き、手に持つと温かみを感じました。
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レンデが手に取った杖は『エンバーの杖』と呼ばれるもので、その形状と雰囲気には特別な魅力がありました。杖の本体は滑らかな木材でできており、その色合いは深い赤褐色。手に持つと、少し冷たいが心地よい感触を伝えてきます。全体の形状は、僧侶が持つような聖杖に似ており、シンプルでありながら存在感があります。
杖の一番上には、六角形にカットされた濃い赤い魔石がはめ込まれていました。魔石の色合いは深く、炎のように揺らめく赤が特徴的で、光に当たるとわずかに輝きを放っています。この魔石が杖に力強さを加え、火のエレメンタルや火の魔法との相性が抜群であることを示しています。
杖の頭部の周囲には、シンプルながらも印象的な火の模様が彫刻されています。これらの模様は、炎の動きを模しており、細かい銀の装飾が彫り込まれて、その中に埋め込まれています。銀の装飾は控えめながらも精巧で、杖全体の美しさを際立たせています。
全体的に、エンバーの杖はシンプルでありながら存在感があり、魔法使いの杖としての威厳と力を感じさせます。火のエレメンタルや火の魔法との相性が良く、レンデが現在磨いている魔法系統にも適していることが明らかです。
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「この杖も良さそうですね。」レンデはつぶやきながら、杖をじっくりと見つめました。「相性を試してみてもいいでしょうか?」
店主は優しく頷きました。「もちろんです。杖との相性は非常に大切ですから。」
レンデは『エンバーの杖』に手をかざし、魔力を少しずつ流し込んでみました。すると、暖かく心地よい流れが感じられ、相性が良いことがわかりました。レンデはこの杖が自分にぴったりだと確信しました。
「これに決めます。」レンデは決断し、店主に微笑みました。「ありがとうございます。」
レンデは小袋から金貨を取り出し、店主に渡しました。フォンクライン家から借りた金貨のうち、40枚を支払いに充てました。この金額は、下級貴族のほぼ1年分の収入に相当し、レンデにとってはかなりの出費でした。しかし、エンバーの杖が彼の冒険にとって重要なアイテムであることは明らかでした。
店主は驚きと感謝の表情で金貨を受け取り、杖を丁寧に包んでレンデに手渡しました。「どうぞ、気を付けてお使いください。」
レンデは『エンバーの杖』を手に取り、店を後にしました。
レンデは、王都での魔法道具探しを終えた後、さらに重要な目標を達成するために動き出しました。今度の目標は、竜の情報を手に入れることでした。
あとからヘルミオに小言を言われた
(レンデ、お前が購入した『エンバーの杖』について、少し話しておきたいことがあるんだ。貴族として物を購入する際には、一般的に商品を届けてもらい、後で支払いをするのが常識とされているんだ。しかし、お前はその場で全額支払ってしまったね。下級貴族の一年分の収入に相当する額を一度に支払うのは、少々異例なことなんだ。
実際、魔法道具店の店主もその方法に少し驚いた様子だったよ。これは悪いことではないが、貴族社会には一定のマナーや慣習があるから、注意しておくと良いだろう。支払いのタイミングや方法にはそれなりの理由があるんだ。お前がその辺りに気を付けることで、貴族としての立ち振る舞いももっと洗練されるし、周りからの信頼も深まるはずだよ。)