102話:魔法道具屋 セルヴィス
レンデは朝早く、エリスから借りた選りすぐりの駿馬にまたがり、王都に向けて出発した。馬は優れた速力を持ち、驚速をかければ半日で到着できるが、レンデは安全を考慮して、1日半の道のりを選んだ。これなら、無理なく王都に着くことができ、必要な準備も十分に整えられるだろう。
王都に到着するころには、昼下がりの陽射しがまだ燦々と降り注いでいた。レンデは馬から降りると、まずは道具屋を訪れることにした。彼が必要としているのは杖であったが、手持ちの魔法具がなく、初級魔法学校で支給された小さな杖を失ってからは長い間、杖を持っていない状態だった。杖がなければ魔法の威力や精度に影響が出るため、急いで調達する必要があった。
道具屋に入ると、棚にはキャンプ道具や冒険用品が所狭しと並んでいた。店主は中年の男で、無愛想ながらも仕事に集中している様子がうかがえた。レンデは一通り店内を見回しながら、店主に声をかけた。
「すみません、魔法用の杖を探しているんですが、ここでは扱っていませんか?」
店主は顔を上げ、レンデを一瞥した後、わずかに眉をひそめた。「うちでは魔法道具は扱っていない。だが、隣の区に古い魔法道具を扱う店がある。そこなら、君の探している杖も見つかるかもしれない。」
「ありがとうございます。教えていただけますか?」
店主は、店内の簡単な地図を描き、道を教えてくれた。レンデは礼を言い、教えられたとおりに隣の区へと向かった。
少し迷いながらも、古びた商店街の端にたどり着いたレンデの前には、一見すると年代物の雰囲気を漂わせた魔法道具屋が現れた。店の外観は少し古びており、木製の看板には「魔法道具屋」と書かれていた。店内には杖やオーブ、魔法書など、魔法の発動を助ける道具が数多く並んでいた。
レンデが店の中に入ると、店主は若そうだが、おじさんと呼ばれる年齢に近い中年の男性で、カウンターの後ろで何かを修理している様子だった。レンデの姿を見て、すぐにカウンターを離れて近づいてきた。
「いらっしゃい。どんなお探し物ですか?」店主は笑顔で迎えた。
「こんにちは。魔法用の杖を探しているのですが、適切なものが見つかるかどうか…」
店主はレンデをじっくりと観察し、何かを察したような顔をした。「君、なかなかの魔力を持っているね。もしかして、かなりの使い手か?」
レンデは少し驚きながらも、うなずいた。「はい、まだ若いですが、これからもっと力をつけたいと思っています。相性の良い杖を見つけるために、アドバイスをいただけると助かります。」
店主はにっこりと微笑み、レンデに発動体の見分け方を教えてくれた。「杖やオーブ、魔法書などの発動体には、それぞれ相性がある。君が手をかざしてみて、発動体との間に柔らかい暖かい流れを感じられるものが、相性が良いとされているんだ。」
レンデは言われた通りに、店内に並ぶ杖を一つ一つ手に取り、手をかざしてみる。だが、どれも彼の手の中で暖かい流れを発することはなかった。失望の色が浮かぶが、レンデは諦めるわけにはいかなかった。