表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

学問と権利

作者: へも

 生まれた頃から読書をさせられていた私は、幼稚園まで『英才教育』を受けていたものの、小学校に入学した途端それが無くなった。

 地元の公立小学校に入学した私は、学問に興味を持つ、異彩を放った子供だった。担任には可愛がられたが、生徒からはいじめを受けた。

 私は公立小学校の勉強に物足りなさを感じていた。試験は手ごたえがない問題ばかり、授業は遊びのようなもの。幼稚園の頃は算盤そろばんや四則計算や漢字を習っていたというのに、逆戻りして平仮名、足し算。授業は受けても受けなくても同じと思った私は、学校に行かなくなった。

 両親は泣き喚いた。秀才に育てるつもりが、ただの登校拒否になってしまった私を見て。しかし、全て両親が悪いのだ。幼稚園では只管ひたすら勉強させていたのに、小学校はごく普通のところを選んでしまった、両親が。


 そのまま六年が過ぎた。私と同い年の子供は今頃中学校に入学しているところだろう。私は危機感を覚えた。私は中学校に向かった。親は泣いて喜んだ。

 中学校は小学校に比べて窓・扉が幾分小さく、暗く感じた。皆黒い服に身を包み、睨むような表情で前を見つめている。私は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。緩やかな雰囲気の小学校と違い、緊迫している。首周りを覆う学生服とその雰囲気が私を嘔吐えずかせた。


 入学式、始業式と過ぎ、その日から私は勉強が出来ると思っていた。楽しく勉強して、志望校に行けると思っていた。しかしその期待は外れ、毎日のように学級崩壊が起こり、勉強なんてとても出来なかった。

 教師はこれの対処をしなかった。ただ、教室で暴れまわる者どもを傍観しているだけだった。黒板には何も書かない。何の試験もしない。

 これでは、小学校と何ら変わらない。いや、寧ろ酷くなっている。皆、好き勝手をしている。私は、また登校拒否をした。

 両親は再び泣き喚いた。私に何故、どうして、と訊いた。私は何も言わなかった。真実を言ったとしても、この親は何も認めてくれないだろうから。ただ、無言でそこに坐っていた。


 これまで、無駄な月日を過ごした。世間の中学生は受験勉強に追われ(とはいっても、あの中学校の生徒がどうかは知らないが)、大変な毎日を送っているのだろう。受験をしないというのも、楽でいいかもしれない。どうせ勉強させてもらえないのなら、勉強しないほうがいいかもしれない。

 勉強できなくて苦しむなら、勉強しなくて苦しむほうがいいかもしれない。


 我々には、学ぶ権利などない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ