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除霊師シオ  作者: らすく
第2章 除霊師達の活躍
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吾輩は犬である

 吾輩は犬である。名前はポチという。なんでも柴犬という犬種に属するらしい。自分でいうのもなんであるが、吾輩はまじめな性格だと思う。故に吾輩は飼い主には忠実であったのである。そして飼い主も吾輩を、とても大切にしてくれた。目下、特に今の状態に不満は無い。それなりに恥じることのない、犬としての人生、いや犬生を送ってきたつもりである。


 いつも通りに夕方に犬小屋から出て、飼い主が門柱から帰ってくるのを待っていた。

 「ワン!」

 「おう、ただいまポチ。」

 飼い主は少々ごつい感じの大柄な男である。そのゴツゴツとした手で、飼い主は吾輩の顔を優しく撫でてくる。勿論、額も顎も撫でてくる。たまらずに吾輩は目を細める。それはそれは、気持ちが良いのだった。受け手に回っているばかりではない。そこで吾輩も負けじと飼い主に飛び付くのだった。ペロペロと舌を出して、ブンブンと尻尾を振って・・・・。この際、正直に言おう。吾輩は、この飼い主が大好きだ。例えば飼い主の為なら今すぐに、この命を投げ出しても良いとさえ思っている。その様に吾輩が考えているのが伝わっているのかどうか、確認する術はない。

 「行くぞ。ポチ。」

 「ワンワン!!」

 飼い主に散歩を促され、吾輩はピョンピョンと跳び跳ねて喜んだ。それは決して建前などではなく、本音からの行動だ。

 「はっ、はは!!」

 飼い主もご機嫌な様子である。どうやら難しい事はあんまり考えない方が、吾輩達にとって幸せなのかも知れない。吾輩は尻尾をブンブンと振りながら、飼い主と散歩に湿気込むのであった。


 ===== そして月日は流れ =====


 どうやら吾輩も、この家の重鎮といえる存在となった。近所の人間や犬達で吾輩の事を知らぬ者はいないであろう。もちろん反りの逢わない猫共も・・・。しかし最近大きな変化があったのである。皆、素っ気ないのだ。今までは好き嫌いに関わらず、吾輩と遭遇する者からは何かしらの反応があった。本当に何もない・・・・。


 だが吾輩自身よりも気がかりな事があった。

 「ふう・・・・。」

 飼い主は庭で、項垂れていた。よほど気持が落ち込んでいるのだろう。そのゴツイ身体が一回りは小さく見える。吾輩にとって、そんな飼い主の姿をみるのは・・・、とても辛い・・・・・。本当に消えてしまいたい・・・・。


 ===== 時空は歪んだものと思われる =====


 (・・・・・・。)

 今まで何をしていたのだろうか。気が付くと吾輩は道を歩いていた。誰も一緒にいない。勿論、吾輩には自我がある。吾輩は犬である。

 (・・・・・・。)

 吾輩は孤独ではない。そのはずである。しかし思い出せないのである。とても大切な事を・・・。一番大切な人を・・・・・。

 (ん・・・・。)

 その足元に吾輩は気が付いた。その脚は、とてもか細かった。もっともあの男に比べての話であるが・・・・。ん・・・・。男・・・・。その男は・・・・・。吾輩の頭は混乱していた。

 「・・・・・!」

 その顔は突然、吾輩の前に現れた。この人間は吾輩の目線に合わせて、腰を落としてきたのだった。

 「どうしたの。ワンちゃん。」

 この女は無表情であった。それでも彼女が吾輩を案じている事は伝わってきたのである。吾輩は心に決めた。この女に対して自分の心を開くことを・・・。


 ===== 舞台は吾輩の家へ =====

 

 吾輩は例の女と共に、自分の家に帰ってきたのだった。

 「ん?」

 我々の姿を確認するなり、その男は声を漏らした。しかし久しぶりに見る顔だ・・・・。見るからに屈強そうな男である。この男は・・・・・。

 「お嬢ちゃんは?」

 男は女に語り掛けた。どうやら想定外な来客であることが、そのイントネーションから伝わってくる。すると少しの間だけ女は黙っていたが、ゆっくりとそして大きく両手を広げてのだった。

 「お、おお・・・・・!」

 その瞬間に男は驚きの声を出した。そして彼の視線は吾輩の方を見下ろしていた。

 「ポ、ポチ・・・。」

 その男の眼には涙が溢れていた。そして吾輩も思い出したのであった。そう吾輩は犬である。名前はポチという・・・・。そして、この男は吾輩の飼い主・・・・。


 自分で言うのもなんであるが、吾輩は理解力に長けている方であると自負している。この女の話を聞いて、今まで吾輩が置かれていた状況をおおよそ把握できたのである。もう何年も前に吾輩は天寿を全うしていたのだ。そしてあの世には行かずに現世を彷徨っていたのだ。どうやら吾輩は自分自身の死を自覚していなかったのである。この白い線の入った黒い服の女は、何か特別な力を持っているのだろう。今となっては認識されないはずの吾輩の姿が、飼い主に見えるようになったのは女のおかげなのだろう。

 「ポチ、ポチ・・・。」

 飼い主は腰を降ろし、吾輩を思いっきり愛でた。吾輩も尻尾を振り、精一杯に彼の愛情に応えた。お互いに分かっていた。もうこれが本当に最後の別れであるという事を・・・・。

 「もうそろそろ。」

 女の言葉に飼い主は頷いた。吾輩も心の中で頷いたのであった。寂しいが別れは避けられない・・・・。女は右手をゆっくりと挙げた。そしてまたゆっくりと、その手を降ろした。


                          ~「吾輩は犬である」~ <完>

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