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除霊師シオ  作者: らすく
第2章 除霊師達の活躍
18/19

楽しかったよ、お姉さん

 (まだいるのね。)

 その女性看護師は、誰もいなくなったベッドをみつめていた。もうその患者が亡くなってから数か月が経過している。それでもこのベッドには、未だに新しい患者が来ていない。なぜそうなのか、それには特に明確な理由は無い。しかしはっきりとしている事が一つだけある。皆、このベッドを避けているのだ。ここには何かがある。そう感じているのだ。もはや話題に出す事すらしない。病院の上層部ですら、そう思っている事を、この女性看護師は分かっていた。そして恐らく一人だけであろう。この病院の関係者で本当の理由を把握しているのは・・・。

 (待っててね。もうすぐ解放してあげるから・・・・。)



~~~~~ 彼の視点 ~~~~~

 「うえーん!!}

 同級生に苛められたのか、それともまた別の理由なのか。僕は目一杯に、涙を浮かべていた。とにかく辛いのだ。やがて自分の頭上に、とある感触があった。それは決して髪を頭に押し付ける様なものではなく、フワッとして優しく撫でてくるものだったのだ。やがて感情が落ち着きそうな僕は、顔を上げた。

 「おねえちゃん。」

 そう彼女は僕の姉なのだ。いつも優しくしてくれる。泣いていた僕を、何も言わずに見守ってくれる。それはただただ有難い事なのだ。お姉ちゃんがいることが・・・。


 今日も退屈な授業が終わった。皆ゾロゾロと教室を出ていく。決して俺は慌てたりはしない。俺は腕を頭の後ろに組み、椅子の背もたれに体重をかけていた。もう俺は10代にして怠惰な人生を送っているのだ。でもかといって生きる事が嫌な訳でもない。その理由は目の前にいる。こうしている間も、この女は黙って俺に向い合わせで座っている。まあそれでよいのだ。元来、俺は騒がしい奴は苦手なのだ。こうして何気に時間が経っていくのは心地よい。いつの間にか俺は眠りについた。


 「面白かったかい?」

 「うん。」

 自分達は柄にもなく恋愛映画をみた。相変わらず、彼女の返事は素っ気なかった。それでも自分は別に悪い気はしていない。彼女はそうゆう女なのだ。そう彼女は僕の彼女なのだ。何とか大学に入ったは良いが、学業とバイトの両立は忙しい。元来それほど裕福な家の生まれでは無かったのだ。経済的には無理をして大学に通っている。正直に言うと、卒業まで持たないかも知れない。

 「寄ってくかい?」

 自分はカフェの前で彼女に促した。だが彼女は黙って横に首を振った。多分、懐具合を心配してくれているのだろう。

 「また明日も会ってくれるかい。」

 「うん。」

 彼女はコクリと頷く。そしてクルリと背中を向けて、ゆっくりと姿を消していった。真に素っ気ない女の子だ。そして未だに自分は、彼女は何処の誰なのかも知らない・・・・。


 「ふう。」

 アパートに帰った私は、思わず溜息をついた。部屋はこじんまりとしている。私は仕事帰りに寄ったコンビニで買った商品が入ったレジ袋を、トン、とテーブルに置いた。

 「はあ。」

 また溜息だ。我ながら冴えない男だ、と思う。安倉を掻き目を瞑った。そして若いころからの人生を振り返った。小さい頃は泣き虫だった。高校の頃は少しだけ不良っぽく振舞った。大学時代は経済的に無理をしながらも、なんとか卒業はできた。だがそれからはまるで駄目だった、と思える。大学の就職活動の時期は不況の真っただ中だった。それでも雇ってくれる会社があったので、私はそこで働いた。しかし向いてなかったのか努力が足りなかったのか、数年の勤務の後に希望退職をした。それから職を転々とし、今は非正規雇用の建設現場で働いていた。やはり体力的にはつらいが、勤務時間が終わったら後は何も考えなくて良いのもあり、私の性にはあっていた。缶チューハイを飲みながらコンビニ弁当を食べる。悪くはない。これが今の私にとっての、ささやかな幸せだ。多くを望むべきではないのだろう。しかし寝床に着いた私は思った。

 ===== 寂しい =====

 (はっ・・・・!)

 その時、私は気が付いた。傍に座っている少女の姿に・・・・。



 ~~~~~ 第三者の視点 ~~~~~

 その女性看護師は、例のベッド前にいた。しかし今回は一人ではない。

 「うう・・・・。」

 ベッドには老人が寝ており、間を覚ましたようである。

 「お、おお・・・。」

 老人は大きく眼を見開いた。その視線の先には、セーラー服の少女がいた。

 「・・・・。」

 全ての事を老人は悟った。この少女が自分と一緒にいてくれたという事を・・・・。そしてそれは夢であったと言う事を・・・・・。それでも老人の気持ちは・・・・。

 「楽しかったよ、お姉さん。」

 彼は心底幸せそうな表情を浮かべた。

 「いいわね。田沢さん・・・。」

 女性看護師は老人にあることを促した。そして彼は女性看護師の言葉を理解しているらしく、コクリを頷いた。それはとても穏やかな表情であった。

 「じゃあ。」

 女性看護師はセーラー服の少女に眼を合わせた。すると少女は右手をゆっくりと挙げ、スッと降ろしたのだった。

 ===== 老人は成仏した =====


 彼女の名は神頼拝美かみよりおがみ。生来から強い霊感を持つ女性看護師である。彼女もまた、除霊師シオと繋がりを持つ人物の一人であった。

 

                       ~「楽しかったよ、お姉さん」~ <完>

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