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除霊師シオ  作者: らすく
第2章 除霊師達の活躍
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私はトップアイドル(2)

 ~~~~~ ウミの視点 ~~~~~


 私は幼い頃から芸能界、とりわけアイドルというものに憧れていた。テレビで可愛いお姉さん達が踊る姿を見て、よく真似ていたものだった。そんな調子だから、お気に入りのアイドルの振り付けは自然と覚えていった。さらにそれを自分なりに昇華して、アレンジを加えたりしたりもした。そして自己流で練習を積んで、友達の前で披露した。皆、私のダンスを見て喜んでくれた。そんな反応に対して、私は満足だった。また自分にはアイドルの適性がある、とさえ思った。もともと人を喜ばせたりすることが、自分は大好きだった。それを自分の才能を以て実現出来たら、こんな喜ばしい事はないであろう。いつしか自分の転職はアイドルだ、と信じ込むようになった。日々、私の野望は大きくなる一方であった。勿論、気持ちだけではなく、来るべきその日への準備は怠らなかった。


 そして来るべきチャレンジの日がきた。私は希望を叶えるために、アイドルグループのオーディションを受けたのだった。常日頃から自己流ながらも、躍り続けてきた成果なのかも知れない。本番では、我ながら上手くできたと思った。その自分の見立ては正しかった。見事に私は合格を果たしたのだった。正直に言うと期待半分、不安半分といった気持ちだった。でもこれで目標を達成した訳ではないのだ。まだ登竜門をくぐったばかり。研修生の身分で、スタートラインに立ったばかりだ。真の意味で、私はアイドルになっていないのだ。


 私は芸能界に入った。所属したアイドルグループは出来立てだが、そのにいるメンバー達はヒヨッコの自分の目から見てもレベルの高い娘達だと思った。そんな中に私は入ったのだ。この中から秀でた存在にならないと、未来は無い。レッスンは過酷を極めた。今思うと、そう感じていた時点で既に自分には才能が足りなかったのかも知れない。周りの娘達は皆、ライバル同士だ。しかしどうしても、そうは思えない相手がいた。

 「お疲れ!ウミ。」

 彼女はサカ。とても明るく人当たりのよい娘だ。この娘は厳しいレッスンにも、決して弱音を吐かない強い人間でもある。お世辞にもダンスは上手くはない。しかし私はサカは凄いと思った。激しいレッスンで皆がクタクタになっても、彼女は違う。眼が死んでいない。体が疲労していても動きが力強いのだ。そんなサカには私だけではなく、メンバーの皆が励まされた。私たちのグループは次第に人気が上がり、売れ出した。それに伴い彼女は、このアイドルグループ内の人望を集めていった。


 「お疲れー!!」

 サカの大きな声が控え室に響き渡る。今や彼女は、このアイドルグループのセンターであり、まとめ役でもある。私を含めたグループのメンバーも、それは認めるところだ。でもグループは崩壊した。サカのスター性がずば抜けていて、グループのバランスが崩れたのだ。そしてサカはプロデューサーの判断でソロデビューすることになった。何人かの娘は別の事務所に移籍したりして、各々で再起を図ることにした。しかしそれ以外の娘たちは、アイドルの道をあきらめて芸能界を去ることにした。そして私もそのうちの一人だった。目の前でサカの輝きを見せつけられ続けて、自分自身の才能の限界を知ったからだ。


 私は芸能界から去り、アルバイト生活をしていた。そこにヒョッコリとサカが姿を現した。彼女は私をスタッフになって欲しいと言った。アイドルの夢を破れた自分は、サカの誘いを断った。しかし非常に熱心な彼女の気持ちに、結局は応える事となった。サカは純粋に私と仕事がしたかったのだ。そしてサカの付き人となった私は一生懸命に働いた。雑用的な仕事をしても、サカは本当に感謝してくれた。それは嘘偽りのない気持ちであることは、伝わってきた。彼女の誘いを断らなくて良かった、と本当に私は心の底から思えた。そこの自分は幸せを見つけたのだ。サカには伝説的なアイドルになってほしかった。自分か果たせなかった夢を実現して欲しかった。しかし現実は残酷だった。突然にサカは体調を崩した。病院の診断は末期の癌だった。私は目の前が真っ暗になった。でも本当に絶望しているのはサカの方だ。最後まで私は彼女の傍に寄り添うと決めたのだった。だがその気持ちも叶えられなかった・・・・。サカは病室の窓から飛び降り、死んでしまった・・・・。


 ~~~~~ 第三者的視点 ~~~~~


 かつてのトップアイドルは、病室の窓から身を乗り出していた。

 「もうやめて!!サカ!!」

 サカが振り向くと、そこには親友のウミとセーラー服の少女が立っていた。セーラー服の少女が誰であるかは、もう説明するまでもないだろう。そしてサカも気が付いていた。このセーラー服の少女が今の自分の状況が原因で現れたという事を。

 「貴女はもう死んでいるのよ。そして何回も同じことを繰り返しているのよ。」

 そのセーラー服の少女の台詞を聞いて、サカは項垂れた。もう自分では薄々分かっていたことを、改めて示されてからなのだ。確かにサカは自分の死を受け入れられずに、死後も何度も繰り返し病室の窓から身を投げていたのだった。親友のウミは、これ以上の言葉は出なかった。しかし直ぐにサカは、力強く顔を上げたのだった。その動きにウミは一瞬たじろいだ。

 「また生まれ変わって、トップアイドルに返り咲くよ!心配しないでウミ!!」

 「サカ・・・・・。」

 もうこの世の人ではないサカの飛び切りの笑顔とは対照的に、この世のウミの眼には涙が溢れていた。しかしそれは嬉し涙であった。そんなウミを見て、サカはさらにほほ笑んだ。

 「じゃあ。」

 サカはセーラー服の少女の方を向いて、頷いた。セーラー服の少女も頷き、相槌を打った。そしてセーラー服の少女は、ゆっくりと右手を上げた。

 「サカ・・・。」

 「ウミ、しばしのお別れよ!!」

 セーラー服の少女がゆっくりと右手を降ろすとき、サカの身体はピッカと光輝いた。それは紛れもないトップアイドルの眩いばかりの輝きであった。こうしてトップアイドル・サカはこの世から去り、成仏したのだった。


 ~~~~~ それから数十年後 ~~~~~


 後に芸能史に残るスーパーアイドルが現れた。そのアイドルを見守る観客の中にウミがいた。ウミは、このアイドルに何か感じるものがあったのだった。そして流石のウミも気がついていなかったのである。その観客の中に、あのセーラー服の少女がいる事を・・・・。


                         ~「私はトップアイドル」~ <完>

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