アリア=リコリス
「聖剣あぁぁぁあっ!!!!!」
(いける!勝てるっ!このままぁっ!!!)
闘気は既に剥がされている。剣聖は魔力がないから剣を防げるわけもない。それに毒で身体もまともに動かないはずだ。行ける。そう確信した刹那、オクトゥスは動いた。
「…まったく……素晴らしい才能だ。勇者の血がここまでとは想像もしませんでした」
オクトゥスが消えた。聖剣が空を斬る。魔術の反動で身体が軋む、体制を崩したエイディスは動けない。
(どこだ…!どこにいる……。眼の前に居たはずだ…身体が動かない。まだ肉体が我の魔力に馴染んでいないのだろう…少しでも魔力出力を誤ればたちまち身体が動かなくなる…)
突如、背中に激痛が走った。
「オク…トゥス……毒回ってるだろ。なんで動ける…」
「我慢してるだけですよ?」
(化け物が…)
ゴッ……
それを最後にエイディスの意識は途切れたのだった。
「…ディス様……」
声が聞こえる。
「っ!?」
エイディスが目覚めるとそこは白いベッド…否、ここはデリヴェラ王国の医務室だ。
「どうしてここに……あぁそうか負けたんだったな」
ふと横を見るとそこには見慣れない者がいた。さらっとした茶色のロングヘア、翠の美しい目をした女子だった。
「あっ…あの、おはようござい…ます」
「…あぁ…おはよう…君は?」
「私はアリア=リコリス。この医務室で白魔術士見習いをしてます。お見知りおきを。エイディス王子」
にっこりと優しい笑みを浮かべる彼女はどこか懐かしい気配を感じさせた。
「そうか。よろしくアリア…」
(なんだろう…この感覚は…いや…)
エイディスは彼女を、アリアを見つめながら理解した。
「ミネルヴァ…」