剣聖〜中編〜
エイディス視点
「そういうことか……!剣聖!!」
「おや…ご存知でしたか…」
(先程わずかに感じた魔力の吸い取られるあの感覚…やはり『闘気』か!)
「闘気」それは剣士の最高峰、剣聖のみが扱うことのできるスキルである。剣聖は魔力を持たない。そのかわり相手の魔力を相殺し吸収する結界を身体に纏うことができる。吸い取られた魔力をもとに結界は硬度を増していき使用者の身体強化をする。
「改めて名乗りましょう。私こそがレインラック=ウィーバーの名を継ぐ者。三代目剣聖 オクトゥス=メンダシウムです」
(我も剣聖とは少し因縁があるからな…まさかこの時代まで残っているとは…)
前世にて剣聖は勇者とともに魔王に挑んだ英雄の一人である。世界で唯一人、全く魔力を持たず産まれた稀有な存在。その剣は天を切り裂き、地を貫く。
剣のみで言えば勇者以上の使い手。
しかもその上魔力が効かないのだ。まさに天敵。
魔王であるエイディスとの相性は最悪だ。
(剣聖が…!)
オクトゥス視点
「それにしてもよくわかりましたね。これが『闘気』だと。普通の人なら魔力を打ち消す所まで気づいたとしても『対抗魔術』だと思うものですが」
「あ、あぁ…書庫で読んだんだよ。それにあの感覚は打ち消すというより吸い取るだった」
(すごいな今どきの子は。いや…この子が天才なだけか。)
打ち消す感覚と吸い取る感覚の違いなどそう分かるものではない。
彼には生まれつき魔力がなかった。彼の家系は代々魔術協会の幹部であったために魔術が使えないことを知ると家族はあまりいい顔をしてくれなかった。
だが彼は剣が好きだった。
魔力のない彼が唯一強くなれる方法だったからだ。剣を振るうときだけ家族や魔力のことを忘れることができた。初めは小さな木すら切り倒せなかったがそれでも毎日剣を振り続けた。そして気づいたとき彼の剣は巨大な山脈を消し去っていた。
「まぁ…バレたところでどうというわけでもありませんがね」
そうだ。ただ全力で剣をふるい、若き勇者を導くだけだ。
「『闘気』展開…」
身体に纏った闘気は吸収した魔力を喰らいさらに強化された。
そして、「闘気」にはさらなる使い方がある。
全身纏わせた「闘気」を握りしめた剣に集約させる。
剣を弾き、魔術を喰らう鉄壁の防御結界、それを帯びた剣に切り裂けぬものはない。
「『七星剣・三式』…」
剣の切先が黄色に輝く。星をも斬る剣聖の剣だ。
大地は揺らぎ、黄金の塵が舞う。
「『黄塵万丈』」
ごう…という音が聞こえた。エイディスはこの音を知っていた。