25点くらい
森は今魔力で満ちていた。
「しかとその眼に焼き付けるがいい…これが『王気』だ」
ゴオッという音とともに木々が薙ぎ倒される。
恐ろしい、ただ一つの感情にトロルリーダーは支配されていた。
「ヴ、ヴモオオオオッ!」
錯乱したのか手にしていた棍棒で突撃して来る。
その勢いはリーダーの名を持つにふさわしい迫力を秘めていたのだろう。だが、相手はそこらの烏合の衆のリーダー如きではないのだ。
「無策とはリーダーの名折れだぞ?策くらい講じてみてはどうだ?」
エイディスは一歩も動かずその棍棒を素手で受け止めると同時に棍棒はそこらの木枝のようにへし折れる。
「もっとも、貴様がどんなにその小さな脳みそで策を講じようとも我の爪先にも及ばないがな」
トロルリーダーの眼前に手をかざすと魔素を収束させる。
「いい機会だ。ここで今の我がどれだけの力を使えるのか試してやろう」
魔素は魔力に変化し黒く染まってゆく。
(漆黒、混沌、逢魔、さてさて以前の我との差を見てみようではないか)
「今より我が行使するは魔術ではない。魔法だ」
絶望の呻き声が木霊する。これはエイディスが魔王として編み出した魔法だ。
「『冥命滅崩』」
エイディスの掌が黒く光ったと同時にトロルリーダーの身体が弾けとんだ。返り血によって緑の草原が赤く染まった。
「ふむ…25点といったところか…衰えたものだな」
魔王であった頃であればもっと素早く高威力に放てただろう。それにまだ制御がなっていない、手が少し痺れてしまった。
「う、うぅ……」
リーデが目を覚ましたようだ。
(さてどうしたものか。こんな事がバレたら大変だぞ…しかしリーデ達を殺すわけにもいくまい、困ったな…)
「しかたないか…幻術でも見せてやろうかな」
リーデやその他の二人に手をかざし精神を壊さない程度の魔力を流し込む。
「幻夢」
途端にリーデたちは苦しみ始める。
「あれ、やり過ぎたか…」
「う、うわぁぁぁ!!!!来るなぁあっ!」
悪夢でも見てるんだろうなーとエイディスはリーデを適当に眠らせるのであった。