ランドセルの中には何が?
年末の大掃除が苦手な私は毎年の事ながらこの時期が憂鬱だ。…今年は特に。
来年の春、大学進学を機に一人暮らしをするので、実家の要らない物を処分するように言われていた。
「由紀!物置部屋の押し入れ片付けなさいよ〜!」
「わかってるってば〜。」
下から母の声が飛んでくる。
「わかってるけど面倒なんだよね。」
ブツクサ言いながら自室の隣にある部屋に足を踏み入れた。以前兄が使っていた部屋なのだが、就職して家を出てから正月くらいしか帰って来ないのですっかり物置代わりだ。
「さて。やりますかぁ。」
押し入れを開けて中を見る。普段開けないので埃っぽさに咳き込んだ。使わない布団やら、何故か捨てずに取ってあった小さい頃の作品なんかで埋まっている。
「うわぁ。懐かし〜!」
そう言って度々手を止めながらも少しずつ片付けていく。押し入れの上半分を片付けた所で膝をつき、今度は下段に手をかける。手前の大きなダンボールを避けた先にあったのはランドセルだった。
「昔ってみんな赤と黒だったなぁ。時々オシャレなの背負ってる子も居たけど。」
懐かしさからランドセルを手に取る。古びた皮の質感と劣化から刻まれた皺を見て時間の経過をしみじみと感じる。
「ランドセルってこんなに軽かったっけ?」
引きずり出すだけでなく、持ち上げて振ってみた。
中でカサッと音がした。
「ん?何か入ってる…?」
空っぽにして押し入れに入れたような気もしたが、記憶は定かではない。膝に乗せてそっと蓋を開く。
中を覗くと出てきたのは手紙だった。
「何これ?こんなの入れてたっけ?」
思わぬ物の登場に何だかソワソワしてしまう。
学校に集まってタイムカプセルを開けたらこんな感じなのだろうか?気恥しいようなふんわり嬉しくなるようなくすぐったい気持ちだ。
「何の手紙かな?誰が書いたやつ?」
落ち着きなく宛名のない封筒から手紙を取り出す。
そこに書いてあったのは…
『いつも見てる。由紀、入学おめでとう。』
「ひぃっ!!」
恐ろしさに思わず投げ捨てる。
丁寧な文字だったが、かえってそれが薄気味悪かった。
「え、いつ入れたの?これ。…っていうか、ずっと前からストーカーしてたの!?」
どんどん湧く疑問に頭が追いつかない。
「もう無理。」
…だから私は片付けが嫌いなんだ。