本編4.王妹末路
※注意:ざまあ的な内容となっており、不愉快に思う方もいられると思います。無理だと思ったらブラウザバックしてください。
私のお母様はとても美しい。お父様は一目で恋に落ちたと笑う。
私のお父様は私が生まれる前まで国王様だった。
お母様との結婚の条件が退位だったらしい。
正妃様は亡くなっていて結婚には問題がないのに、お母様の身分が低いのを理由に反対され退位を条件に結婚した。現国王は私の年の離れたお兄様になる。公式行事以外では会う事はなくて薄情なお兄様だと思っている。
私は生まれた時から離宮に住んでいる。離宮での生活はもちろん快適だけどせっかく王族なのだから王宮に住みたかったわ。私は両親にものすごく愛されている。お父様はいつも“私はこの国の宝だ”って幸せそうよ。だから私が望めばなんでも叶うの。
宝石もドレスも最新のものをたくさん。食事だって最高級のもので。
気に入らない使用人は首にする。お茶も満足に入れられない侍女にはそのお茶をかけてやったわ。私に厳しい家庭教師などいらないのよ。
14歳を過ぎた頃からお兄様が私に縁談をよこすようになった。
でも納得いかないものばかりなのよ。
顔が好みじゃなかったり、お金持ちじゃなかったり、お父様に近い年の人もいたわ。何故お兄様はこんな意地悪をするのかしら。
私は王族よ。身分も容姿も私の美しさに相応しい人でなければ嫌。
お父様にお願いして全部断ったわ。
ある日、取り巻きの子が同じ学年に美少年がいるって教えてくれたの。
早速見に行ったら、今まで見たことがない程綺麗な顔をした少年がいた。
この子だわ! って思ったの。彼なら私の隣に相応しいと思って声をかけたら断わられた。それも婚約者が好きだからなんて、ありえない。
みんな必ず私を一番好きになるのよ。彼はきっと婚約者に洗脳されているのね。可哀そうに。私は優しいから彼の洗脳を解くために度々会いに行ってあげたけど、彼は言う事を聞かないでイライラするわ。だからお父様に相談した。
彼は身分が高くないらしいわ。でも今の婚約者は公爵家の娘だから、私がそこに養女になって彼と結婚すれば解決ね。公爵家の娘には国王から適当な婚約者をあてがえばいいのよ。
次の王家主催の夜会でエスコートをするように手紙を出したら、なんと断ってきたのよ。私からの申し出を断るなんて不敬だわ。
でももうじき私と婚約するのだし、今の婚約者は彼にエスコートされる最後の夜会になるのだから、寛大に許してあげることにした。
王族席から二人を見れば、公爵家の娘がこちらを見て笑ったわ。馬鹿にして許せない。でも、笑っていられるのは今だけよ。彼はこちらに背を向けているから表情は分からないけど、その女から私が救ってあげるわ。
そう思っていたらお兄様に呼ばれて控室に連れていかれた。まだ夜会は終わってないし彼とも踊っていないのに。お兄様は私をもっと大事にするべきだわ。お父様に言わなくては。
お兄様は私の縁談が決まり明日の朝出発する事になったとだけ言って部屋から出て行ってしまった。
はっ?急に何を言っているのかしら。縁談は彼とのはずだわ。何かの間違いよ!
翌朝、私に相応しくない簡素なドレスに着替えさせられ、強引に馬車の乗せられた。
付き添いは老婆ひとり。老婆によると、どこかの王様と結婚するらしい。
それならいいわ。私、王妃になるのね。
でも準備が必要なのに何もない。ドレスも宝石も何も、私に相応しい物を揃えなければ恥をかくわ。どういう事なの?
納得がいかないのでお父様とお母様に会わせてと言ったら、二人は王領の一番北の森の中にある小さな屋敷に移されたって言われたわ。今後そこから出ることは出来ないらしい。前国王なのになんで酷いことするの!在位中は賢王と言われていたのでしょう?お母様に会ってから暗愚になったなんて、酷いこと言わないで。
何日も馬車で移動して、くたくたになった頃に着いた国の人々は自国の人とあまりにも違った。
肌の色は褐色で見たことのない服を着て、私の知らない言葉で話す。
幸い老婆は言葉が分かるようだった。
やっと宮殿に着いたのに出迎えはない。王妃になるのに余りの扱いに腹が立つ。
国王に会ったら文句を言うつもりでいたのに、いざ対面したら冷たい目で私を見下ろし、知らない言葉で何かを言っていたわ。
恐ろしくて震えながら首を振ると呆れた顔をして出て行ってしまった。
私は王族よ。こんな扱いを受けていい存在じゃないのよ!悔しくて泣きながら老婆に当たり散らした。
1か月ほど過ぎたある日、従者が王からの贈り物を持ってきた。
繊細な細工で宝石のついた首輪だ。とても美しくて気に入った。
もっと早く贈ってくれればいいのに。
翌日、謁見の間に呼ばれた。王が態度を改める気になったのだと浮かれていたが、案内されたのは玉座からは離れた場所だ。そして老婆に膝を着くよう言われたけど、そんな屈辱受け入れられない。断ったら騎士に無理やり膝を着かされた。
横には太ってニヤニヤした気持ちの悪い中年の男がいた。男は私を見ると王様に感謝の仕草をしている。とても嫌な予感がする。
その後、別の部屋に連れていかれた。老婆は言った。
「お妾様は、先ほどの臣下に下げ渡されることになりました。おめでとうございます」
「なんですって?妾ってどういう事?王妃ではないの?下げ渡されるって……酷いわ!」
「決定です。このまま先程の男性の屋敷に移動になります」
「嫌よ。それよりも国に帰りたいわ。お父様に知らせて。必ず迎えに来て下さるわ」
「前王陛下でもどうにもできません」
怒りに任せて手元にあったお茶を老婆に投げつけた。老婆は顔にかかったお茶を拭いながら言った。
「私が付き添うのはここまでです。どうぞお元気で」
「何を言っているの?私は言葉が分からないのよ。いなくなっては困るわ。一緒に来てよ」
「あなた様はここに来てから不満ばかりで、言葉を学ぼうとさえなさらなかった。もし努力をされれば何かが変わったかもしれません」
「分からないのよ。覚えられるわけないわ」
「最後にひとつお伺いします。私の名をご存じですか?」
「私がなぜ使用人の名前を知らなければならないの?」
老婆は何も言わず部屋から出て行った。
絶望で目の前が真っ暗になる。私はしゃがみ込んで泣いた。
どうしてこんなことに。本当なら今頃、公爵家に入って彼と結婚してお父様たちに祝福されて、誰よりも幸せになるはずだったのに。
騎士は泣いている私を引きずり、男に引き渡した。
後に、首輪は男の奴隷であることの証明に着けられた物だと知った。
お読みくださりありがとうございました。