5
夜、虫が部屋の柱を齧ってる様な状況の中で私はベットに横になっていた
その時、額を弾かれた様な感覚があった
目を開けると黒いベールの女がこちらを見つめている。死神だ
「何の用だ」
「用なんてもんじゃ無いけどあなたに聞きたい事があってね」
頭を覆っていたチュールを首元まで下ろし、
死神は窓枠に座った
「私、どうすれば良かったのかなって」
「どうすれば?」
「実はあんたと私の契約者さんが花畑に居るとこ影から見ていたんだ。そして、気づいたの私……とんでも無いことしてしまったって」
ふぅ……とため息をついた。その肩まで伸びた黒髪を春の風がイタズラに揺らす
「あの契約した時から私は少しいい事をした
気分でいたの。だって一時的だけどあの人は病気の苦しみから解放されたんだから。でも
今日泣き叫ぶあの人とあなたの言葉を聞いて
気づいたんだ」
「拷問から解放したはずが死刑宣告を告げていた事にね」
目をゆっくりと閉じ、世界から音を消してしまうが如く死神は笑った。その顔には泣いた跡だろうか目の下が赤くなっていた
「でも私が契約しなければあの人は今も苦しんでたかもしれない。だけど契約しても死は
消えない。ねえ」
「私どうしたら良かったと思う?」
その問いにしばらく黙ったのち、私は返した
「答えがあったとしてお前は納得しないだろう。だってどちらにせよアイツは死んでいたんだから。という理由で答えは」
「俺にも分からんよ。敷いて言えば」
「お前はあの光景を見るべきでは無かったし
俺に会うべきでも無かった。それだけだ」
「ふーん」
ひどく不満そうな横顔だった。外からは人々の声が聞こえ、空には少ないが星も輝く
「で、私って悪役な感じ?」
その問いには思わず笑った。滑稽と言うか無邪気と言うか
「残念ながらみんな悪役だよ。俺もお前もあの人も。それからあの人の妻も娘もだ、人生なんざそんな程度さ」
「それ慰めのつもり……?」
「さてどうでしょう」
はぁ……とため息をついて、死神は翼を広げた。鳥の様な背中から生えた私が両手を広げても足りないぐらいの翼
「なーんかどうでも良くなったし明日の朝まで暇つぶしてるわーじゃあね」
死神は窓から地面へ落下する様にその場から消えた。私は一応、地面を確認したのだが何も無かった
さて……