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街を歩くと思った以上に賑わいを見せていた。魚屋に本屋に武器屋に果ては薬物の類いを売る店まである。歩く人々の中には踊るように街を駆け回る子供らの姿もあった
「おにいさん強いん?」
私は子供の1人にこう問われた
私は微笑んで
「さあね。君のご両親の方が強いかもね」
と返すと子はけらけら笑って
「私のお父さんとお母さんすっごい弱いんだよ。おにいさん面白いこと言うね」
と言った
「ああ、だから君が守ってやればいいさ」
「えーおにいさんが守ってよー」
「そうもいかないんだよ」
こんな会話をしばらく続けた
それからまた街を歩くと、路地裏に倒れてる人間が居るのに気がついた。そこで歩いていた男性に「なぜあの人達は倒れてるのですか?」と聞いてみると
「ほぼ人生が終わったそれだけの理由ですよ」
哀れむ素振りも見せず、淡々と男性は答えた
私は目を瞑って数秒間その人達へ手を合わせ
た。どこからか甘い料理の匂いが漏れだして
いるらしく、子供達ははしゃいだ
はしゃいでいた
夜、部屋で昼間買った果物を齧っていると
バウエルが部屋に入って来た
そして、彼は妙な事を言い出したのだ
「俺は三日後に死ぬ」と
もちろん私はそれをつまらない冗談だと
言ったが、彼は真剣な顔をしていた
それでもそんな事が信じたくも無いし信じられる訳も無い、だから彼にそれは自殺か?他殺か?と質問したんだ
「どちらでも無い。これは契約なんだよ」
彼は返す
思わずありえないと何回か口にしてしまった。だってそうだろう、人間はいつ死ぬかなんてものは曖昧にしか分からない、だが彼は今それをハッキリと宣言しているのだ。しかも戦場に飛び込む訳でも首を吊る訳でも無いらしい
「本当なんだよー」
すると、どこからか声がした。彼かと思ったが、彼は変わらず真剣な眼差しでベットに座りながらこちらを見ていた
じゃあ誰だろうと私は正面を向いた。そこには黒いベールを身に纏う少女が立っていたのだ
「初めまして。私は死神、人間様の寿命を頂かせている者です」
丁寧に一礼をして、死神とやらは言った
「この方、実はもう治らない病気を抱えてまして、本当はベットで寝たまま動けない筈なんですよ。でもね、彼は私と契約をしました
数日後に魂を奪ってもいいから少しだけ自由に生活させてくれ。と」
死神が丁寧に説明すると、彼は静かに頷いた
「それじゃ詳しい事はその方から聞いて下さいねーおやすみなさいー」
目の前から死神が消えた
「今日は疲れただろうハリス、明日ゆっくり話そうじゃ無いか。おやすみなさい」
バウエルは笑って部屋から出た
ベットに横たわって私は彼をどう救えばいいだろうかと何度か考えてみた。だけど彼の笑顔と真剣な眼差しが浮かんでどれもゴミ箱に丸めて捨てたのち火を付ける他無いのだった