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宿を出て、街を歩いていると誰かが私に話しかけてきた
「おにいちゃん、丘に花がいっーぱい咲いたよ!一緒に見にいこうよ」
振り返って見ると、この街に来た時に話しかけてくれた子供だった
「残念ながらそれは出来ないんだ。友達がうっかりしててね、忘れ物を届けに行かないといけないんだよ」
私は胸元からブローチを取り出して、見せた
「きれいな飾り……いいな私もそんなのほしい……」
「いい子にしてれば手に入るさ。そうだ、小さな石を一つ持ってきてみな」
私がそう言うとすぐに小さな石を道端から拾ってきた
「それを載せたまま手のひらを広げて」
「うん」
小さな手のひらに小さな石が一つ置かれている。それにそっと手を重ねて私は唱えた
"シグルズアグニッション"
「あ、石が……なにこれ?」
「いい子の印だよ。後はご自由に」
「うんっ…」
「私、これ大切にする……!」
私が石を変化したガラス玉の様な物をその子はぎゅっ……と握っていた。握ったまま、手を振るのだ
「またねーおにいちゃーん!」
「おう、また春が来たら来るかもなー」
子は私が見えなくなるまでずっと手を振っていた。道には誰も水なんてやらない様な雑草がくたくたになって生えている。確かこの雑草の名前はそう
エトロ二ー……そうエトロ二ーだ
花言葉は「素敵な出会い」か
ああ、春の風が街中に流れ込むよ
次の町はどんな街だろうか
私はつい笑ってしまいながら、歩いた
これにて 余命宣告編完結です