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夢を見た
少年になった彼と私が花畑で追いかけっこや
隠れんぼで何度も遊ぶ夢を
夕日が沈んで、夢の中の彼は言った
「さようなら。またどこかで」
私はそれにこう返した
「ああ、どこかが天国なのは無しだからね」
そうしてずっと手を振っていると、いつの間にか部屋の天井を眺めていたのだ
外を見た。光で街が満たされた様ないい朝だ
私は杖を握り、隣の部屋の扉を開ける
そこにはベットで眠るバウエルとまた窓枠に座る死神の姿があった
「2時頃にご臨終でしたわよ。最後は笑っていたわ」
その手には小さな籠があった。中ではきらきらした虹色の丸い物体がゆっくり動いている
「それが彼の魂か」
「ええ、そうよ。意外と綺麗でしょ」
死神は笑顔では無かった。でも悲しみの顔でも無かった。ただ、少しだけ疲れた顔の様ではあった
「さて……始めるか。一旦、窓から降りてくれるかい?」
「はいはい」
素直でもあった。着ている黒いベールとは逆にその瞳は水色のシャボン玉みたいな輝きを失って無かったのだ
私は彼の頭の上に杖を置き、まず彼の顔をゆっくりとなぞる。それから1回だけ口付けをした
「ふぇえ…っ?!キスするのぉ!?」
思わず死神は声を上げる
「そうだよ、これをしないと失敗してしまうんでね」
「やっぱり……人間って変」
そして、胸に手を置いてイメージをする
花びらが風に吹かれて散っていく様な……
……
数分経った
手を離してもいいだろう
「え….….」
私が手を離すと、彼の遺体は砂に変わり、やがてそれは光となって風と共に窓から出ていった
「どういうこと……」
「彼は春の光になったんだよ。ご覧よ」
私は窓と外を指さした。死神は言われがままに外を見る
「光……か」
「次の春には戻ってくるかもしれないね。彼は未練を抱いたままだったからな」
何も無くなったベットに座り、死神は腑に落ちない顔をしながら籠の魂を見つめる
「でもどうしてあなたはそんなに寂しい顔をしているの?これで成功したんでしょ」
「ちょっと母の時を思い出してな。私はそれが原因で一族を追放されたんだ」
「何したのよそれ……」
「何て事は無いさ母の遺言通り、花びらに変えたらこんなのは魔法でも何でも無いって大激怒されてな、永久に顔を見せない事になったんだよ。別に恨んではいない」
「はー嫌だねぇ」
ベットから立ち上がった死神は窓の外を眺めていた私をぐいっと横にどかした
「それじゃ、私は魂を天に渡してくるわ」
「ああ、お疲れ様死神ちゃん」
「何その死神ちゃんって……私の名前"ヤ=カケリャ=テニファ"なんだけど?」
「いいじゃん、死神ちゃんで」
「よくないっ!ぜっーたいによくない!」
「ま、いいや。死を望む時にはいつでもご利用をお待ちしています」
また窓から落下して、死神ちゃんは消えた
さて……いろいろとやらなければならないな
まずはベットを綺麗にしてそれから
……