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俺は友達がすくn……友達なんか欲しくない1

 翌日の昼休み、授業終了後即北条に捕まった俺は、再び視聴覚準備室へと連行された。

 中に入ると、既に欅田が昨日と同じ位置で昼ご飯を食べている。事前に知らされていたのだろう。

 ちらりと北条の方を見ると、こいつも弁当箱を持っていた。もしかしてこれ、長引くのか?飯買ってくりゃ良かった……。

「てか待て。使えないんじゃなかったのか」

 今気づいたが昨日、ここは使えないって言われたよな?北条さん?

「あー……大丈夫‼」

 っべー……という表情で、北条はもごもごと口を動かしている。露骨に目が泳いでるし、神の手ゴールより怪しい。お前絶対に許可取ってないよな?

「嘘をついてるとき、人間は右上を見るらしいぞ」

「と、とにかく今日はだいじょぶだから‼」

こいつ、説明放棄しやがった。まぁいいか。怒られるのは俺じゃないし。

 手近にあった椅子を引いて、入り口からすぐのところに座る。欅田とはちょうどはす向かいの位置になる。

 北条は椅子をがたがたと動かして奥の方のお誕生日席に座り、ご丁寧に指を組んでから厳かに告げた。

「それでは会議を始めます」

「なんだよ、もったいぶって……」

 呆れ半分に呟いた傍らでおー……、と欅田がぱちぱちと拍手している。この子そのうち騙されないかな……。心配です。

「議題は二つ。会長に言われた件と、この部活をどうするかです」

でしょうね。

 昨日、体育祭の手伝いをすると決まった後、俺達は会長からその内容を通達された。

 中身は大きく分けて二つ。一つは事務的な運営の手伝い、そしてもう一つが「騎馬戦」の改革案を出すことだ。

 今年、体育祭は大きな変革期にあるらしく、競技の見直しを行っているのだそうだ。俺も頭の片隅くらいにそんな感じのアンケートを書かされた記憶がなくもない。

そのうちの一つが騎馬戦で、今のところ全員参加形式をやめることは決定済みらしい。……のだがそれ以外なかなか進まず、他の競技を変更しているうちにここまで放っておいてしまったと。

 おまけにそうした改革に付随して、必要な備品の計上、タイムテーブルの再調整、予算案の作成などで猫の手も借りたいところに暇人が三人も来たわけで。それはもう鴨が葱どころか豚が小麦ともやし引きずって醤油の中で泳いでるくらい恰好の獲物に違いない。

 そりゃお鉢も回って来ますわ……。

 北条はメモとペンを取り出して、さらさらとなにかを書き始めた。多分議事録みたいなもんだろう。

「さっそく騎馬戦の方なんだけど、なにかいい案は……」

「ないな」

「ですよねー……」

 がっくりと北条はうなだれた。これには欅田も愛想笑い。

 冷静になれば、北条はまだしも残りの二人に騎馬戦の改善案を聞く方がどうかしてる。俺はもちろんのこと、欅田も体育祭には縁がなさそうだからな。偏見だったら悪いが。

「情報収集が最優先なんじゃないか?アンケートの結果見直したり……あとは、ネットで他の高校はどんなもんか調べてみるとか」

「うーんやっぱりそれが一番かなぁ、もう体育祭まであまり時間ないし、なるはやで‼」

 北条は丸文字で「他校の人に聞いてみる‼」などと書いている。

「誰がやんの?それ」

「え、トージじゃないの?」

「自慢じゃないが俺には校外の友達なんかいないぞ。てかお前、転校生なんだから前の学校の情報とかないのか?」

「あたしが前にいた学校騎馬戦なんてなかったよ」

 使えねー……。

「今失礼なこと考えてたよね?」

「いやいやまさか。欅田はどうだ?」

「…………」

 こちらを見て困り笑い。マンガなら汗マークが出ているに違いない。昨日より態度が軟化しているからヨシ。強がりじゃないんだからねっ!

 ……まぁ、妹にでも聞いてみよう。他に他校の知り合いおらんしな。

「そういや北条って左利きなんだな」

 ふと目に留まったことを思わず言った。ちな俺も左利き(←聞いてないw)。

 冗談はさておき。左利きは左利きを見つけやすいだけで、特に他意はない。

「?あー、そだよ。それがなにか?」

「や、なんとなく左利きって目に留まると言いたくなるなと思って」

「確かに。結構みんなに言われるなー」

「あ、わ、私も左利きなんです……」

 珍しいな、全員左利きなのか。そんな閑話休題が少しだけ部屋の中を支配している。

 こう話していると、なんか俺もまだまだいけるんじゃないかと思う。社会復帰していけ。

「左利きあるあるトークは今度の機会にするとして、次はこの部活どうしよっかなーって話なんだけど」

「諦める」

「却下に決まってるでしょ‼」

 即答でござんすか。困ったでやんすねぇ……。

「欅田はこの部活続けたいのか?」

「へ⁈あ、うん……。文芸部はどっちにしろ今年廃部になっちゃうし、それなら見聞部に吸収されても続いてくれたらいいかな、と……」

 欅田は俯きがちに呟いた。やっぱ俺、苦手意識持たれてるんですかね……。今も露骨に驚かれてたし……。

「なるほどな……。てか、なんか驚かせてすまん」

「あ、いや、そうじゃなくて……私、人見知りだから……」

 言いながら欅田は下を向いている。流石にこれが演技だと言われたら、俺は今以上に人間不信にならざるを得ない。

 なるほど、それじゃあ嫌われたんじゃなかったんですね。良かった~……。早々に嫌われたら立ち直れなかったに違いない。

「はいはい、与太話は置いといて。二人とも何かない?もちろん諦める以外で」

 じとっとした目で北条がこちらを睨んでいる。与太話て。まぁいいや。

「……ないな」

 俺が腕を組んで唸っていると、すっと欅田が手をあげた。

「はいっ桔梗ちゃん」

「えっと……チラシ配ったりして勧誘というのは……どうでしょう」

 はいはいチラシ配りね。バニーガールでやっとく?いや、これは我ながら流石に気持ち悪いな……。反省の意をこめて、ここはまじめに検討してやろう。

「そもそも、チラシ配って入ってくれるような部活か?ここ」

「……やっぱりナシで」

 欅田もその自覚はあったらしい。北条の方を向いて、申し訳なさそうに人差し指でペケマークを作る。

「ま、しかたないね……。そういう部活だもんね……。じゃあトージ、なんかないの」

「友達にお願いすりゃいいんじゃねーの。幽霊部員でも入部してりゃいい」

 むしろ今までこいつが思いついていない方が不思議なのだ。ナントカさんとか、多分お願いすれば入部してくれるって。名前知らんけど。ついでに俺も幽霊部員扱いにしてください。ていうか君、俺のことぞんざいに扱い過ぎじゃないですか?

「うーん……友達かぁ……」

 結構魅力的な案だと思っていたのだが、どうも色よい返事は返って来ない。俺がこいつに捕まった時も同じ感じだったな。何か後ろめたいことがあるのか?

「いるだろ、ほら、なんだっけ」

「花梨?」

「わからん」

「クラスメイトの名前くらい覚えろし……花梨……一木花梨ね。この際だから覚えとけば」

「あーはいはい、覚えました」

 一生役に立つことはないような気がするが。そんなことを思っている俺を見た北条は、ため息をついてから言葉を続けた。

「うーん、頼めば入ってくれるかも知れないけど、すごく仲良いわけじゃないし」

「えぇ……マジかよ。お前、友達の価値インフレしすぎでしょ……」

 ちなみに俺の友達の定義は『道端で会ったら会釈する』だ。だからたまに俺の後ろの人に会釈してんのに、俺に向かってやってると勘違いしたとき、俺の中でそいつはすでに友達なのである。それ、友達の価値デフレしすぎてんだよなぁ……。ボールは友達‼と同レベル。ダメじゃねえか。

「と・に・か・く!別の案!」

「北条を多重人格者に仕立て上げて二人カウントする」

「は?」

 うわ、こいつ何言ってんの……?という顔で北条は俺を見ている。隣では、欅田が困り笑いを浮かべていた。極東魔術昼寝結社の夏は伝わらないかー。いや、伝わるわけねえわ。みんなは、こうやって独りよがりのネタを出したりしちゃダメだゾ♪

 欅田も若干困惑しているようで、大変申し訳なく感じる。仕切りなおすためにこほん、と咳ばらいを一つ。

「部員はおいおい集めりゃいいんじゃないの。少なくとも、今は生徒会の手伝いが先だろ。あれを完遂しない限り、この話は無いんだし」

「わ、私もそれに賛成です……」

「む、それもそうか……」

 北条は腕組みしながら再び考え込んだ。しばらくは何の代案も出て来なさそうだ。ここにいたところで、大した進展もないだろう。

「昼はもう解散でいいか?俺、昼飯食いたい」

「うーん……まぁいっか。じゃあ昼はかいさーん」

 大分投げやりだな……。と思いつつ、俺は準備室を出た。ドアを閉める時にちらりと中を見ると、二人は仲よさげに話を続けていた。もしかして……私、はぶられてる⁈

益体のない冗談を考えている間にも、お腹はさらに空いてくる。携帯を見ると、だいたい昼休みは残り半分くらい。取り急ぎ学食まで降りて、昼飯としゃれこむか。

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