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俺はリレーなんか走らない2

「ちょっと夏海―、遅いよー」

 俺と北条が若干駆け足で入場ゲートまで向かうと、一木の間延びした声と松本の射抜くような視線、それに怪我をした彼やその付き添いが数人出迎えてくれた。

 ほぼ全員、「こいつ誰……」という顔をしている。歓迎ムードではなさそうだが安心してくれ。俺もお前ら誰?って思ってるから。

「やーごめんごめん」

 すまんすまんとやりつつ、北条はそのもとへと向かって行く。

「で、どうすんのー?これ優勝しないと、ウチたち勝てないっぽいよ。本田と同じくらいのやつ、いた?」

 一木はそれを一瞥して、少し遠くで待機している黒組の方を見ている。リョウスケくんは本田というのか。覚えました。

「この、木下くんが走ります」

「……………………?」

 全員が等しく首を傾げる。当たり前だ。つっても他にいい説明はないな。

「うーん……。相変わらず夏海の交友関係はよくわかんないな……。その人速いの?」

 怪我をした本田が、明らかに速いと思ってなさそうな顔で俺を指さす。

「ふつーだと思う。……でも、絶対に勝てるから」

 北条は一瞬迷ってから本当のことを告げた。ここでブラフを張ったところで走ればすぐにわかるからな。

「ま、夏海が言うなら信じるわ。オレの分まで頼むよ、木下くん」

 本田はほんの一瞬だけ逡巡する態度を見せつつ、すぐに納得したようで気障ったらしい笑みで俺に語りかけた。

 これが北条の人徳パワーなのか。普段ならそんな意味わからんもんを背負わされるのは願い下げだが、彼には二人三脚の恩があるからな。

 何かうまい返しが言えればいいのだろうが、あいにくそんなものは思いつかないので、首肯でそれに返す。

「もうちょい自身ある顔しとけ」

 にかっと笑いながら、ばしばしと背中を叩かれる。俺の顔が引きつりまくっていたのは自覚しているが、痛いから叩くな。

「ま、なんでもいいけど」

 一木が言うと、不本意ながら、といった感じで他のクラスメイトも一応の納得をしたようで、本田をつれてぞろぞろと紅組のスペースに戻っていった。


「……てめぇに任せるのは正直死ぬほど尺だ」

 話がまとまった直後、背後から刺々しい声が聞こえた。振り向くと、苦々しい顔で松本が立っている。

「この前のと合わせて、お前には借りが二つできた。いつか返すから、今日のところは頼む」

 松本は頭を下げた。……正直驚きだ。まさか体育祭で勝つためにここまでするなんて。

「別に、気にすんな。お前のためじゃないから」

 これは俺のために走る。俺が、俺の目的を果たすためにだ。

「……そうか、わかった。一緒に勝とう」

 ……それは知らん。青春っぽい雰囲気出してそんなこと言うな。こいつ、絶対今の状況に酔ってるだろ。思わず、心中にわだかまっている疑問が吐き出される。

「どうして勝ちたいんだ?」

「そりゃ、その方が楽しいからだ」

 ……あっそ。人それぞれの価値観だ。否定はできない。

 最後に、松本は俺の肩に手をかけて囁いた。

「でも夏海は渡さねえ。これで勝ったと思うなよ」

 だから知らねえって…………。お前は何なの?まぞくなの?それしては背が高すぎるし俺は魔法少女ではないが?

 ……まぁ、これ以上面倒なことにならないように、せいぜい本気で走ってやろう。

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