序文
「軽い胃腸炎ですね。お薬出しておきます」
白蓮女学院2年、櫻井恵子は最寄りの病院、佐伯医院に顔を出していた。健康だけが取り柄のため自分の不調に不安と恐怖を覚えたが、大したことがないようで安堵した。楽しい学生生活を満喫するためにも自分の長所である健康体が崩れることが何よりも怖かったのだ。華の女子高生、楽しまなくてどうする。これが櫻井のスタンスだった。
「駅前に新しくクレープ屋さんができたんだって!」
「それは要チェックだね」
「今日の学校帰りにみんなで行こうよ」
「さんせー」
櫻井恵子、和泉華、三森あかり、神楽陽子は4人プラスアルファで集団で遊ぶことを楽しんでいるグループだ。
「多恵、一緒に行かない?」
和泉の誘いに有村多恵は答える。
「んーん、私はいいから4人で行ってきなよ。いつも4人一緒でしょ?」
「そう?ならまたの機会に一緒に行こうね」
「うん。華となら行くよ。大人数苦手なんだ」
有村多恵は周りの目も気にせずにこのような発言をするからクラスでは少し浮きがちだ。そんな有村にも目をかけてくれているのが和泉である。有村は誰とでも心の扉を開かせられるコミュニケーション能力が高くカリスマ性も持っているクラスの中心的存在であった。
「あ!斎藤先生、一緒にクレープ食べに行く〜?」
「いや、僕は遠慮しておくよ。それに生徒と教師が一緒に遊びに行くのは問題があると思うんだ」
「そっかー仕方ないね。また明日ね、センセ」
「あかり〜ほっぺにクリーム付いてるよ。とってあげる」
「いいよ華、自分で拭けるって〜」
「クリームそんな重くなくて軽く食べられるのいいね!美味しいよ!」
「やっぱチョコバナナが鉄板でしょ!」
他愛のない会話と何気ない日常、彼女たちはこれから起きる惨劇を想像だにしなかったのだ。




