表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
年が明ける前に、  作者: 奏凪
好きよりも深く
5/5

⑤(最終話)

昨日の後書きにも書きましたが、これで最終話です。


「あ、香月」


 会計を終えた亨は、お店を出てすぐに話し掛けてきた。


「何?」

「もう遅いし、十夜呼んだから」

「それは嬉しいけど……このあと仕事あるんでしょ?」


 元々、亨と今日会う予定はなかった。急に会うことになった理由は、仕事終わりの十夜から連絡をもらったから。


『香月さん、若があなたとお話したいみたいです。夜九時にいつもの場所で若がお待ちです。そのあと若には仕事があるので、あまり若に飲ませないでね。あ、若もそうだけど、香月さんも飲みすぎないでね。それとその仕事は僕も行くので、今日は家に帰れそうにないです』


 だからこのまま亨と別れて、一人で十夜と住んでいるマンションに戻る予定だった。


「あー、入ってるけど……もう夜の十一時だし、お前のマンションまでの道のりすげぇ暗いし。それに、最近の十夜は働きすぎだから勝手に休ませる。代わりの奴呼べば何とかなるものだし……」


 目線をあさっての方向に向け、歯切れ悪く話す亨に思わず笑ってしまった。いつも亨と会ったり話しを聞いたりする時間帯は、彼の仕事の都合上だいたい朝か昼になる。夜に会うなんて、大学の時以来だ。


 その時はまだ例の彼女と出会う前だったから、女に優しくするなんて亨の頭の中にはなかった。そんな彼が、亨が、初めて帰りのことを心配してくれたのだ。素直に嬉しい。


「亨が帰り道のことを心配してくれるなんて意外だわ」

「そんなにか?」

「ええ、意外よ。本当に彼女を大切にしているのね。亨、ありがとう」


 やや不満顔の亨をからかいつつお礼を伝えると、彼は照れ臭そうにそっぽを向いた。そして十夜の姿を視界に捉えると、じゃあなと足早に去っていった。



「さようなら、亨」


 過去の恋の決別の意味も乗せた言葉を紡いで、夜のネオン街に消えて行く亨を見送る。彼の姿が見えなくなるまで見送ると、静かに私の横に来て声をかけた人がいた。


「香月さん、家に帰りましょう?」

「そうね。私たちの家に帰りましょう、十夜」


 その人は、"今"の私が愛してる十夜だった。彼と手を重ねて、亨が消えて行った反対の住宅街に続く大通りへ足を向けた。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


感想はいつでも受け付けております。


本日からまた現代の恋愛「僕の右肩-愛してる-」を更新しています。良ければそちらもご覧下さい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ