表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
年が明ける前に、  作者: 奏凪
好きよりも深く
2/5

話の区切りの関係で今回は短いです。

もう一話更新します。

 彼の決意をしっかりと聞き届けたあと、私はきちんと彼の目を見て笑顔で頷いた。良く出来ました、と母親が幼子に言うように。


「うん。私も、亨を支える相手は彼女以外考えられないわ。だから、二人の結婚は賛成よ」


 もう一度、二人が結婚することに異論はないことを伝えて。そうすれば、久しぶりに彼の弱さを垣間見ることが出来た。


「情けねぇな、俺。でも、香月に話しを聞いてもらって良かった」

「亨の役に立てたなら嬉しいわ。また何かあったらいつでも話ぐらい聞くから」

「……ああ、ありがと」


 フッと柔らかく笑った彼に、私も笑みを返せば思わぬ一言を貰った。


「いい女になったな、香月」


 本当に亨が予想外のことを言うから、返事を返すのに一拍遅れてしまった。


「……っ、びっくりした。私がいい女って、今更気付いたの?」


 ちょっと強気に言い返してみれば、亨は滅多に見せない(正確に言えば、彼女の前ではいつもしている顔だけど)とても柔らかい表情になった。


「確かに、今更すぎるな。お前は元々いい女だ。俺が心を許してる数少ない友人だし」


 それなのに、とその次に続く言葉が何故か予想できてしまって。先に彼が告げる前に自ら言の葉に乗せて、私は彼に尋ねた。


「私の気持ちを知っていたのね?」


 "私の気持ちがバレていた"と確信を持って亨に問えば、少しだけ気まずそうな顔をする。そして慎重に言葉を探す。


「……ああ。何年、一緒にいると思ってるんだ」


 なんだか悔しかった。私の気持ちが筒抜けだったことよりも、亨が私の気持ちを知っていたことに気付けなかった自分自身が。


「さあ。でも、気付かれない自信はあったわ。だって、その頃の亨は彼女に盲目だったから」



 ──そう。私が亨を愛した時間と、亨が彼女の恋人になった期間は見事に重なっていた。だからこそ、絶対に気付かれない自信があった。取り繕う演技だけは昔から得意だったから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ