②
話の区切りの関係で今回は短いです。
もう一話更新します。
彼の決意をしっかりと聞き届けたあと、私はきちんと彼の目を見て笑顔で頷いた。良く出来ました、と母親が幼子に言うように。
「うん。私も、亨を支える相手は彼女以外考えられないわ。だから、二人の結婚は賛成よ」
もう一度、二人が結婚することに異論はないことを伝えて。そうすれば、久しぶりに彼の弱さを垣間見ることが出来た。
「情けねぇな、俺。でも、香月に話しを聞いてもらって良かった」
「亨の役に立てたなら嬉しいわ。また何かあったらいつでも話ぐらい聞くから」
「……ああ、ありがと」
フッと柔らかく笑った彼に、私も笑みを返せば思わぬ一言を貰った。
「いい女になったな、香月」
本当に亨が予想外のことを言うから、返事を返すのに一拍遅れてしまった。
「……っ、びっくりした。私がいい女って、今更気付いたの?」
ちょっと強気に言い返してみれば、亨は滅多に見せない(正確に言えば、彼女の前ではいつもしている顔だけど)とても柔らかい表情になった。
「確かに、今更すぎるな。お前は元々いい女だ。俺が心を許してる数少ない友人だし」
それなのに、とその次に続く言葉が何故か予想できてしまって。先に彼が告げる前に自ら言の葉に乗せて、私は彼に尋ねた。
「私の気持ちを知っていたのね?」
"私の気持ちがバレていた"と確信を持って亨に問えば、少しだけ気まずそうな顔をする。そして慎重に言葉を探す。
「……ああ。何年、一緒にいると思ってるんだ」
なんだか悔しかった。私の気持ちが筒抜けだったことよりも、亨が私の気持ちを知っていたことに気付けなかった自分自身が。
「さあ。でも、気付かれない自信はあったわ。だって、その頃の亨は彼女に盲目だったから」
──そう。私が亨を愛した時間と、亨が彼女の恋人になった期間は見事に重なっていた。だからこそ、絶対に気付かれない自信があった。取り繕う演技だけは昔から得意だったから。