07 荒くれ冒険者ギルド
扉を開いて現れた少年にギルドの面々は余所者を見る目を隠さない。ここは酒場も併設している一大拠点。この時勢が悪い時にやってくるのは敵か無能な指揮官気取りに決まっている。
「坊主、帰りな。」
目もくれないで酒場のマスターが言い捨てる。
だがこの勇者、この程度のことは当然想定内。
「ギルドに用は無い。ここでしか飲めないものがあると聞いて飲みに来ただけだ。」
ずずいとカウンターに向かう。
足をひっかけてくる小悪党の挑発も完全に回避、そして無視。
「ミルクを頼む。」
「随分口のきき方がなってねぇが、その服装。おめぇが勇者ってやつだろ。飲んだらとっとと帰んな。」
あざけ笑う声が響く。
しかし数名は困惑。ここに来てミルク……?
「それと雄牛の血だ。コップ一杯にして寄越してくれ。」
「おまえ」
「乳と血……まさか、あれか!」
サッと用意された二つのグラスの液体を大ジョッキにあけてグッとひと振り一気飲み。
「伝統に則って俺はこれから人の血を流しに行く。俺が今宵率いるは過去、これまでこの地で生きてきた人々の魂よ!」
そう言って口元の血を拭う。もう誰も彼を囃し立てる者はいない。
「馬鹿が。誰が冒険者に頼るか。俺一人とこの地の血脈数多で十分な大勢力よ。あばよ!」
扉を押しのけて去っていく後ろ姿を見つつ、面々は皆、立腹していた。勇者が会議で最後に言った内容は当然皆知っている。そしてギルドを頼ってくるだろうことも想定内。
だがこうも相手にされない結果となるとは誰が予想できただろうか。
一人、また一人と己の得意な武器を抱えてギルド本部を出ていく冒険者達。無礼な勇者をその手で討つためだ。