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06 会議
「我々としては勇者の戦力を……」
「断固反対する!」
同日午後、開口一番に同様の剣幕で宰相に迫る統帥。
長い戦いで自分が率いている軍がどれだけ数を減らし質を悪化させられてしまっているかは彼も当然把握している。だが感情がそれを許さない。
王前円卓会議であってもだ。
そこへ勇者から唐突の発言。
事前調整一切なし。
「では不肖ながら私はこれより独自に勢力を率いて情勢の変化を狙おうと思います。」
「ハァ!?」
運輸大臣から飛んでくる当然の反応。だがそこに既に勇者はいない。ただ彼の声が開かれた扉の向こうの廊下に反響し、聞こえてくるのみ。
「……王命に従わない冒険者の集いへ向かいます……」
会議は勇者を戦力に加えない方向で進んだ。事ここに至っては宰相以下各大臣揃って王軍統帥の意向に賛成するようになったのである。勇者の行動はあまりに奇抜すぎる。