19 盟主になった勇者
「俺が仲介しよう。」
勇者は自らの野心を隠す事なく言ってのけた。
ここは魔王軍主力大部隊を押し留めた地。烏合の衆である新興国連合が正規軍に勝てるはずもなく、大崩れを繰り返していたところへ救世主のように現れた彼を皆が称えた。
さながら悪い魔法にかかったかのような擁立ぶりに魔王はもちろん王国も帝国も血の気の引く思いで事態を見守ることとなる。
王国も帝国も現状出来ることはない。唯一動けた魔王国も合流を果たした大参謀の諌言により自国内の引き締めに回ることになった。
この状態で勇者は高らかに宣言する。
その声は遠く数キロ先まで聞こえた。
「今日の事態に至ったのは第一に被征服者たる旧大王国及びそれを支える権力基盤であった帝国の無為、第二に大魔王国と国号を変えつつもその実態を大国へ変貌させるに至れなかった魔王の無能によるところが大きい!」
「そして最大の理由はなんといっても全国家元首が民の平和を希求する声に耳を傾けることが無かったことだ。これでは王だの皇帝だの言ったところで君主の椅子が泣いておるわ!」
「俺は──」
そこで一度言葉を切って自分を取り囲む大々群衆を身体ごと見回す。人々は一層引き込まれる。敵も味方も。
「俺は諸君ら400余の中小国家が大連合を成すよう働きかけるものである! 如何なる大国であろうと俺一人居るだけで退けることが可能なことは既に伝え聞いているところだろう。」
「征くぞ、平和な世界へ! 王国でもなく、帝国でもなく、魔王でもない。我々が我々自身の手でこの世界を安寧に導くのだ!!」