14 王国と帝国の汎人同盟
その頃の王国。
魔王軍の占領下にあった元同盟国、同じ汎人構成国家である隣の帝国より皇帝その人が接触してきていた。
勇者の行方が分からなくなったと同時に魔王勢力の中に混乱が生じている。彼奴がどこで何をしているかは分からないが無関係ではないはずだ。
しかしこの好機、王国としては逃すわけにいかない。
「これより……。」
「うむ……。」
国王と皇帝の会談はこれだけで通じ合った。防諜が完璧でない現状を考慮したということもあるが、長年の誼も大きいだろう。
この翌日、王国軍は旧帝国方面へ全軍を向かわせる。旧帝国領土からは軍民一体となって呼応する姿が各地で見られた。魔人、亜人による融和政策が成功しかけていたところへ突然の蜂起。それも一切の予兆無し。
「最後の汎人同盟」と呼ばれる二大国の復活劇から再同盟締結までの一連の流れである。
国王と皇帝が各々自ら率いたことで戦意は最高潮。損失も少なく無事に帝国領土を奪取することに成功した。
一方、停戦準備の第一報が届いていた魔王軍。彼らもある程度の撤退準備が進んでいたため損害軽微で済んだ。
だが仮にここで魔王軍に些かの被害を出すことに成功していたとしても国力差は歴然。両国のこの行動も一時的な領土回復にしかならないはずだった。
勇者がこのタイミングで魔王に直談判していなければ。