13 魔族達の転換
「停戦でいいんじゃない?」
言い放ったのは魔王后。魔人側の実質№2である。彼女は新しい物に目がないことで有名だった。勇者の瞬時の妙技と未知の武器に惹かれたのである。
「そうか? まあ、后がそう言うなら無期限休戦という形も検討してもよい。実際、少なくともお前が寿命で死ぬまでの間は攻めにくいことには違いないのだからな。」
「魔王様!」
「休戦合意などいつでも破れる。だが参謀、こやつの雰囲気に三日前に感じた異界召喚の気配が混じっている。」
それを聞いてざわつく一同。
「まさか、勇者……?」
「王都から魔王城までは7000kmは離れている。それが本当なら計り知れない能力の持ち主ということに……。」
「この城の岩盤から一直線に上ってきたって報告も上がっている。一体あの男はなんなんだ?」
「一つ確かなのは──」
勇者の言葉に、シン……と静まり返る。
「異世界の人間ではありますが、わたくしはこの世界が平和を取り戻すことを望んでいる……ということです。個人的には大魔王殿を崇敬する心持ちさえあります。ゆえに事を荒立てたくない。出来るだけ穏当な筋道を選んでいただけませんか。」