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11 頂上会談
「おまえ、出来るな。」
「それほどでも。」
ピリピリとした空気が一室を支配していく。
言いつつ、魔王は腰の大刀に手を掛けて鞘から抜き払う。答えつつも、勇者は下げた頭と胸の前で曲げた右手を動かさない。
シャリン。
一閃。小気味のいい音が響く。
神速で突き入れた刃が周囲の装飾物を切り裂いた。しかし勇者には届かない。全く同時に短剣を剣筋に重ね、力を受け流したのだ。
「交渉に参りました。わたくしは汎人側の全権委任を受けた特別大使にございます。」
再度、礼の姿勢。
「ふむ、聞こう。」
それに対し魔王は最大限の警戒を行うよう目配せで同室の幹部に伝え、自身も抜身の刀をそのままにして応えた。