魔王サイド『魔王の”目覚め”』
(私が魔王の元に呼ばれたってことは何か意味があるかも知れない)
(そう考えると思い至ることがある)
(あえて、魔王の側から世界をよくする方法……あるかも知れない)
(そのためには、もしかしたら、大きな犠牲を払うかも知れない)
(だけど――これが私にしか出来ないというなら――)
(――やるしかない!)
(幸い、あの『魔王ちゃん』なら、上手くやれるかも――)
京香は、魔王の間の前で、力強く両手を握りしめ、扉を開いた。
「おはようございます!」
「……んあ?」
そこには、ウサギの被りものをした魔王が部屋の真ん中で布団にくるまっていた。
「……かっ」
(可愛いーーーーーーーーーっ!)
京香は思わず叫びそうになるのを抑えていた。
「ありぇ、あんただぁれ?」
(あのキャラ忘れてる……可愛い)
「お、お忘れですか?昨日参謀になった京香です」
「きょおか?きょーか…………う、うむ、待っていたぞ!」
(取り繕ってもウサギの着ぐるみのままですよ、可愛い)
「し、しかし、どうしたのだ?こんな時間に」
「え、昨日午前10時に来いとおっしゃったじゃないですか?」
「まだ、朝の9時55分ではないか」
「…………そ、そうですね」
(だとしても、5分で絶対準備できないよね、この子。今まで寝てたし)
「まぁ、よいわ。少し待っておれ、朝食でも一緒にとりながら話そうではないか」
そう言いながら、魔王は魔王の椅子の裏から歯ブラシを出した。
(そこで歯磨きするんだ……)
「あ、でも、朝ならもう食べましたよ?」
魔王の口からポロっと歯ブラシが落ちた。
「な、なにっ!?もう食べたのか?お主何時に起きたのだ?!」
「8時ですけど……」
「はちじだと!?」
そんな驚くような早さではないと思う。
「ぬぅ……これが、お主の世界で有名な”意識高い系”というやつなのか……」
(なんで、そんな知識はあるの?)