王国サイド『宴のあとの”現実”』
翌日――
昨晩は国をあげてのどんちゃん騒ぎだった。
そんな雰囲気もあって、恭弥は何も言えなかった。
(全く……俺が勇者だって?冗談じゃない!)
とはいえ、異世界に来た身の恭弥は他に頼るアテもない。
(ある程度乗ってやって、どこかで、理由をつけて元の世界に帰させてもらうか)
そんな方法があるのかは知らなかったが、呼んだのだったら、返す方法があっておかしい話ではないと恭弥は思った。
(さて、あの王サマはなんて言うかな)
王に呼ばれていた恭弥は王の間に入っていった。
「オエッ……よ、よくぞ来、来、来たなオボロロロロ……」
(思いっきり二日酔いしてる……!!)
「さ、さてまず頼みたいこ……ゲホッゲホッ!ゲロが肺に!ゲホッゲホッ!」
(なんなんだ、コイツ……一国の王ともあろう者が自制も出来ないのか?)
「む、無理……ギブアップ!後は頼んだ、ロベルト!!」
王は頭の上で大きく×マークを作ると兵士達に運ばれていった。
「……」
「では、私から説明させていただきましょう」
「あ、ああ……」
「と、その前に私、大臣をしていますロベルトと申します。担当は主に経済についてです」
「ああ、よろしく……」
(……経済?関係あるのか?)
「よろしくお願いします、勇者様」
「……その前にその、勇者様、というのはやめてくれ」
「そうですか。わかりました、勇者殿」
(そこじゃねぇ!)
ツッコむと、時間を無駄にしそうなので、恭弥はスルーすることにした。
「ではまず、経済政策についてですね」
「いや、それ、勇者がやることなのか?」
「もっちのロン・ロン・ロン!リーチのみ、です」
(安っ)
「……なんでだ?」
「勇者殿には、この国を救っていただけねば、いけません」
「……それと、経済政策になんの関連が?」
と、口にする恭弥だが、酷く嫌な予感がしていた。
「我が国の財政ですが、昨夜の大宴会で、危険水域を割りました。」
「じゃあ、駄目だろ!そっからどうすんだよ!?
せめて、割る前に話せよ!
ていうか、そんな状況で宴会なんか開くな!!」
「いやぁ、国中に飲まなきゃやってられない、という空気が蔓延してまして」
「だとしても、自制しろよ!なんで、国単位で自棄になってんだよ!?」
「土台無理な話ですよ?国王からしてアレですし」
「……否定はしないが、そんなこと言っていいのか?不敬罪とかないのか?」
「あ、このことはどうか、オフロードで」
「……オフレコって言いたいのか?」
「まぁ、ともかくですね。勇者殿には救国の英雄として、経済から立て直してほしいのですよ」
「よくよく考えれば、経済担当の大臣なら、これ、アンタの仕事だろ?」
「うぐっ…!!痛いところを突きますね。クリティカル率アップのスキルですか?」
「至極、当たり前のことを言っただけだ。」
「では、手始めに削れるところから削りましょうか」
「そうだな」
(まぁ、ボケてはいるが、真っ当な思考は出来るようだな)
「では、明日から勇者殿の食事は無しということで」
「アンタが、国家転覆を企む逆賊だということは、充分わかった」