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日常、という異常

「お昼のうちは、ウチで勉強しよう。」


芹那さんは勉強への関心が高まっているようだった。


「やはり、期末ですか??」

「うん。今日はこっちの地元のお祭りだけど、できれば別のお祭りにも行ってみたいんだよね。」

「それに……。」

「夏休みのうちは、何か遊んでおきたいじゃん??」


確かにそうだ。

夏休みの最初の一週間を補修で潰すのは、誰もが避けたいことだろう。


「以前勉強したときは、数学でしたけれど、今日はどうしますか??」

「おんなじ日にある理科をやっておこうかと思うんだよねー。」

「なるほど。化学から行きますか??」

「うん。物質量のところ、おせえて。」


緩い口調になった芹那さんに物質量について説明をする。


「とりあえず、グラムを分子量で割れば、molになる??」

「うん、そうそう。」


やはり、数学の時と同じで芹那さんはそこまで勉強が苦手というわけでもなさそうだった。

絹が水を吸うがごとく、知識を吸収していった。

私も私で、説明をするために教科書に書いてあることをかみ砕いて伝達する。

これがいい刺激になる。

日が出ているうちは、化学の勉強をした。


「そういえば、お祭りは何時から始まるんですか??」

「あ、もう5時じゃん。そろそろ行こうか。」

「じゃあ、この問題だけやってしまいましょう。」

「うん。」


机に向かい合い、勉強する。

たまに会話をしては、相手の表情を見る。

芹那さんはやはり笑っていた。

部屋の窓から差す夕日に照らされて、少し焼けた顔で笑っていた。


「よし!」


一緒に近くの写真館まで来た。

なんでも、この時期は撮影用で余った着物を貸し出すサービスがあるらしい。


「よし、それじゃあ、一緒に行こう。」

「え、でも……。」


当然、今日はお小遣いを持ってきている程度で、ましてや着物を借りるお金なんて持っていない。


「大丈夫。おかあさんからお金もらってるから。それに……。」

「今日はこの前のお礼もあるから。一緒に楽しも。」


夕日にさらされた満面の笑みだ。

どうやら私はこの笑顔に弱いらしい。


「うん。ありがとう。」

「うんうん。それにつっきー、着物に合いそうなんだよねぇ。」


「それではこちらへ。」


係の人に案内される。


「お~、似合ってるじゃん、つっきー。」

「そ、そうですか??」


なんとなくだが、こう、着飾ってます、という場面の様でなんだか恥ずかしい。

顔が熱い。


「そんなに照れなくてもいいじゃん。」

「あ、ありがとうございます。……芹那さんも、似合ってますよ。」

「うん、ありがとう!!」


「……それじゃあ……。」


手を取り合い、出かける。

今日は夏祭り。


「楽しもうか!!」

「はい。」






そういえば、今日は一体どんなお祭りに行くのだろうか。


「芹那さん、わたし、今日のお祭りがどういったものか、よくわからないんですが。」

「ん~??」


いつの間にか芹那さんはイカ焼きを頬張っていた。


「いや~、さっき見たときについ、ね。」


この奇妙さを私はどこかで体験した気がする。

時間が、飛んだ??

気が付くと、ここは商店街で辺りに人がたくさんいる。

そこに見覚えのある白髪を、私は見逃さなかった。


霧崎君だ。

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