逆ハー追い出し6
だからと言って、アルスの起こした事は許されるものではない。
王位継承の有力候補だからといって、必ず継げる訳では無いという事をアルスはしっかり覚えておくべきだったのだ。
国王はその目に怒りを纏いながらアルスに言った。
「これ以上お前が由岐に対して無礼を働くのであれば、お前に王位を渡す事は出来ん」
父からの、怒りの混じったこの忠告に、アルスは性根を入れ替えるかと思いきや・・・。
本気だと受け取っていなかったようで、それからもアルスの由岐に対する態度は決して良いものとは言えなかった。
そして、由岐のお腹も徐々に大きくなっていきついにカイが産まれた。
この時も、アルスは由岐の心配をするでもなく、城下町の酒場で酔っぱらっていた。
酒場の店員が由岐についていなくて大丈夫なのかと尋ねていたが、構うもんかと答えているのを多くの一般人に目撃されていた。
この様な者が後の国王なのか、と後日城に抗議の声が寄せられたのは言うまでもない。
カイが産まれた時、由岐の胸元へと産婆から渡された瞬間だった。
由岐がネックレスとして身に付けていたリンの実にカイが触れた時、そのリンの実が青く輝いたのだ。
由岐が驚いていると、部屋から光が漏れたのか国王と王妃が駆けつけていた。
そして、二人は由岐に告げた。
「アルスに王位を継ぐことは出来ない。次の国王はこの子だ。リンの実が、この子を選んだ」
「・・・このような事は、リューヘルスの長い歴史でもいくつかの前例があったのです」
そうして、王妃から語られたのは長い歴史の中でも国王となる者と、その伴侶となるよう召喚された異世界人の仲が良くない時のことだった。
様々な事例を王妃が語る中、由岐は産まれたばかりの我が子に課せられた大きな役目を思うと、たまらなく申し訳なかった。
もし、自分がアルスを受け入れていれば・・・そう思ったが、どうしても嫌だったのだ。
それに、由岐はリンの実を得るためにリューヘルスの様々な場所を旅したが、そうしてリューヘルス国を見る事もせずただ王位を継げる日を待つだけのアルスは国王に相応しく無いと感じた。
由岐は、アルスに一度だけチャンスを与えるよう国王と王妃に進言した。
もちろん、リンの実がすでにカイを選んでいることは承知している。
それでも・・・。
そのチャンスというのが、カイに対する責任をきちんと取ることができるのか、という事だった。