逆ハー追い出し4
「でも、あんたにとってこの子は自分の子ですらなかったんやな」
そう、少しだけ悲し気な眼差しをする由岐。
始まり自体、あまり良いものでは無かった由岐とアルス。
異世界に無理矢理召喚させられてしまい、しかも国王となる者の伴侶となれと強制されたのだ。
わけも分からず混乱していた由岐に唯一分かったのは、もう元の世界に戻ることは出来ない、という事だけ。
事情を知っている王妃からの説明があったため、何とかこの国の事情を知る事の出来た由岐だったが、これは本来召喚された時、相手となるはずのアルスから説明しなければならない事だった。
なぜなら、ここリューヘルス王国では異世界人という他の世界からの“血”を受け入れるのは、古から続いた近親婚で濃くなった血を薄めるため、という理由がある。
もちろん、連れて来られた方からすると迷惑な話なのだが、結局はこの国でたくましく生きる事を選択するような人間ばかりが召喚されるように上手くできている為、今回も最初の対面を上手くすれば仲睦まじい夫婦が出来上がるはずだったのだ。
しかし・・・。
「お前とはたった一度しか寝なかったではないか!その一度で出来たなど、信じられるものか!!」
由岐とアルスは、その言葉通りたったの一度しかそういった行為をしていなかった。
しかもその一回というのが強姦だった、というのだから由岐にとってアルスというのがどんな存在だったかは想像しやすいだろう。
そんな経緯で出来た小さな命に、由岐は当初混乱した。
既に国王の伴侶となれる資格を有していた由岐だが、彼女は全くそんなつもりはなかった。
ただ、自分がこの世界で生きていく為に頑張っていただけなのだ。
それなのに・・・。
「どうか、その子を産んで下さい」
由岐に良くしてくれた、理解者でもある王妃にこう言われてしまっては由岐にはどうにも出来ない。
とはいえ、だんだん育っていく命に嫌悪感が沸かない自分がいる事にも気付いていた。
「その子が、次の国王となるでしょう」
王妃のそんな言葉を、その時はただ聞き流していたのだが。
リンの実という国王の証にカイが触れた時、由岐はその言葉の意味を知った。