逆ハー追い出し2
「そのリンの実、どんな所にあった?」
アルスの傍らでこちらを見る愛花に、由岐は問いかける。
「そ、それは・・・あの大きい湖の底に私しか入れない神殿があって、その奥の宝箱に入ってたわ」
愛花の指す大きい湖とは、リューヘルス王国最大の大きさを誇っており、湖底に古い神殿が沈んでいる事で有名だ。
しかも、その神殿はリューヘルス王国の王族と、その伴侶となる者しか入れない。
先程、愛花は“私しか”と言ったが、実際は他にも入れる人間が居る――由岐もその一人だった。
愛花の答えに、由岐はもう一度ため息をついた。
それが気にくわなかったのか、アルスは由岐に不快そうに言う。
「何だ、その態度は。アイカが私の伴侶となるのがそれほど不満か?」
「・・・全然。ただ、こんな直ぐに分かるような嘘のせいでっていう気持ちが態度に出ただけ。いくつか教えてあげるわ、愛花さん」
酷く冷めた目付きで由岐は二人を見つめた。
不満などはじめから無かった。
芽生える事すら無かったのだ。
自分に害をもたらそうとしなければ良かったのに―――
少しだけ、種のように埋もれていた感情が芽を出そうとしていた。
しかし、芽吹く事無くその感情は消え失せた。
神崎愛花がリューヘルス王国へと降り立った日に。
.