夜警でエルフと遭遇!?だが何も始まらない
夜の学校ほど暗く不気味なものはない。
灯りがあるとすれば非常灯か夜警の懐中電灯の光くらいだろう。
見えにくい足元を照らす光が大きく揺れているのは、寒さに堪え肩を擦っているからだろうか。
今日は非番前の新人教師が代理で夜警をしていた。
「新人だからって何でもやらせやがって。夜警のおっちゃん、校長にチクったろうか」
教室のドアを乱暴に開け放ち、中を一通り見てから閉める。ルーチンと化してペースもあがり最後の教室のドアに触れた。気が抜けたのかふと視界が白くなった気がしたが気のせいだと、扉を開ける。中には何もない。
扉を閉めたとき、手に違和感があった。
ドアノブが濡れている。
懐中電灯で照らしてみれば、光沢のある何かが光っていた。
「間に合わなかったのじゃな」
廊下の奥から微かに聞こえた透明感のある声に振り向くと同時に新人の真上の照明だけが弱々しく灯った。
近づいてきて顕になった声の主は小柄な少女だった。特徴らしいものは暗くて見えないが耳に長い飾りのような何かを着けているように見える。
「すまない純也。思ったより術の完成に時間がかかっての。ワシ以外で残ったものはおらんかった、、、」
暗くて誰か分からないが知り合いのようだった。とはいえ知り合いであっても部外者の侵入は許されない。
「と言ってもお主の様子を見るに術も未完成だった訳じゃな。本当はお主の転移前に来る予定じゃったのに」
「なんのことか分かりませんが、この時間は立ち入り禁止ですよ。おうちに帰りなさい」
泣かれたら困るので冗談っぽく軽めに注意する。しかし、少女は聞く気がないようだった。
「とぼけてる場合か。お主を助けるために来たと言うのに」
少女の声に怒気が混じる。体も冷えてきて、視界が暗くなる。さっき触ったドアノブのヌメリが肩まで上がってきたような気がした。
「だいたいすべてはお主のせいじゃ。魔王を倒したとき相討ちなんぞに持ち込みよって。最後は治療も受けずに故郷へ帰還とは」
彼女が話している内容が頭に入ってこない。感覚が麻痺している。脳を揺さぶられる。体が崩れ落ちる。
「リーフィレアたちが生きていた頃は本当に楽しかったのぅ。あやつが魔物に特攻するたびにお主はいつも振り回されて」
少女の顔が近づいてくる。この世のものとは思えないきれいな顔をしていた。特に気になったのは耳が長いことだった。これは海の向こうの大森林にいた種族の特徴だったはずと、おぼろげに思い出す。
「もう終わりのようじゃな」
「レビィ」
伸ばした手が空を掴み、落ちる。
闇から現れた少女は、また闇へと消える。
灰でできた足跡を残して。




