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007. 魔王の冒険は始まらない

ダメージ「落下」(75)

 75-30(防御軽減)=45

 →34


 容赦のないニュートン先生からのパンチが炸裂する。

 装備のおかげである程度防げた。


HP 120→86


「いってーーー!」


 俺は足を抑えて転げまわっていた。

 痛みがあるということは現実であるということだ。


 しばらく転げまわって落ち着くと、起き上がり空を見上げる。


(あの高さから落ちて生きているというのもすごいよな・・・)


 さっきまで俺がいたところを確認する。

 ビルの20階近くの高さはあるだろうか?


 流石、課金による魔王ロールプレイに徹してきたアバターであり、ステータスも高水準だ。

 足が正常に動くことを確認して、王都レグルスの方向に足を進めた。



・・・・・・


 道中、森の草木を雑にかき分ける音がした。


スキル「気配感知」

 113

 →104(成功)


 「リトル・オーク」だ。

 同じ名前の魔物でも個体差があるが、気配感知により比較的強い方であることが分かった。


(ちょうどいい。試してみるか・・・)


 「段ボールおじさん」のアカウントの時に思ったが、魔法攻撃はゲームの頃と比較して、とてつもなく強くなっていた。

 ステータスにより強化された分があったとしても異常である。


 特殊アイテムを使用してクラス変更制限を解除する。

 そして、メインを遊び人に、サブを魔法使いにクラスチェンジをして、武器を初期装備「村人の剣」に切り替えた。

 剣なんてリアルでは見たこともなかったのに、持っただけで自然と扱い方が頭に入ってきた。


 ステータスウィンドウを表示させる。


・ステータス

 体力(HP):86/120

 攻撃(ATK):4 (+2)

  :

  :


(よし!)


 遊び人と魔法使いは魔王が持つクラス中で、攻撃力が最低値である。


(この状態なら、物理攻撃をしても大したダメージにならないはず・・・)


 草木に潜めながら油断しているオークの背後に回り込み、剣を振り下ろした。

 

 空気を切る音とともに、剣からソニックブームのようなものが発射され、振り下ろした先のオークと周辺にあった木々、地面がすっぱりと切れてしまった。

 唖然と立ち尽くす俺の髪が余波でなびく。


 オークの体はそのままバランスを取れなくなって倒れ伏せる。明らかにオーバーキルである。


(これは、アカン!)


 メニューを開き、武器を全武器中でも最も攻撃力が低い「涙のスタッフ」に切り替える。


 「涙のスタッフ」はサイズが大きく、非常に綺麗な装飾が施されているため、ぱっと見ではレア武器にも見える。だが、スタッフのくせに魔法力上昇なし、特殊効果なしという雑魚武器である。

 その弱さから装備していると初心者にも馬鹿にされるぐらいのネタ武器であった。


魔法「武器劣化」

 46

 →30(成功)


 そのネタ武器にさらにマイナス補正バフを掛ける。

 完全に舐めプである。


 装備変更後はオークをちょうどよく倒すぐらいになった。


(こんなところでこのスタッフが役に立つとは)


 どんな武器でも収集しておくマメな癖のおかげである。


(そうなると、せっかく魔王城から持ってきた最強武器はほとんど一般では使えないな・・・)

 俺はアイテム袋にある装備を選別しながら考え込んだ。


 背後から迫る闇に気づかずに・・・


「ぐあっっ!」


 突如、背中に痛みが走り、俺は近くの木まで吹き飛ばされる。

 ダメージはほとんどなかったが、手もとにあったアイテム袋が遠くに飛ばされた。


 ―――油断していた 。


「グルオォォォーー」


 そこには鋭い爪と牙を持ち、真っ黒な闇と覆われた巨大な狼が次の攻撃を仕掛けようとしていた。


「ダークウルフ!? 嘘だろ? なんでこんなところに中盤のモンスターが!」


ダークウルフの攻撃「気絶タックル」

 20

 →19(成功)


 慌てて魔法の詠唱をするものの完全に出遅れた。

 武器には詠唱短縮効果もない。


「ん? あれ、なんかデジャ」


スキル「絶対回避」

 99

 →100(失敗)


 狼のタックルがちょうど腹にあたる。


「ブゥゥゥゥーーー」


 俺は変な声を上げて吹っ飛ばされ、倒れこんでしまった。


 偉い人は言っていた・・・

 1パーセントならワンチャンあると


「いたぞ! 人が襲われて・・・」


 気絶する前に、かすかに人の声が聞こえたような気がした。


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