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006. 魔王は城から逃げ出した。


 起きたときには知らない天井・・・いやこの天井知っているぞ!


 魔王城の寝室の天井だ。


(あれ、何でここにいるのだろう?)


 さっきまで、段ボールおじさんのアカウントでゴブリン退治をしていて・・・

 それから、ダークロードに切りつけられて・・・


 確かに痛みはあった。一瞬しか感じなかったがわかる、あれは致命傷だ。

 思い出すとゾッとする。


 自分の体を見てみると、何も異常のない魔王のアバターだった。

 ・・・そもそもこの体自体が異常であるが


 もしかすると「段ボールおじさん」のアバターは死んでしまって、自動的に空いていた「魔王」のアカウントに移動したとかだろうか?


(それより今の状況やばくね?!)


 魔王ダンジョンの魔物たちは手あたり次第周辺地域を襲い、人々からヘイトを買っている。

 そのせいか、魔王城攻略イベントが発生して、陥落させられようとしているかもしれない。

 そんなのに関わるのは御免だ。


「よし! 早急に魔王城から脱出しよう」


 夜逃げするために、急ぎ足で魔王の宝物庫に行く。

 道中に数々の罠を仕掛けていたが、アバターのせいか大きな動きで避けることができない。

 魔王が「SAS〇KE」に出演したようなシュールな絵ずらだ。


 宝物庫につくとアイテム袋に最低限必要になるものを回収していく。

 

 もちろん、この姿で逃げるわけにはいかない。


(変装術のスキルスクロールがここにあったはず)


 スキルスクロールとは、スキルの使い捨てアイテム版である。

 クラスによりスキルが習得できないキャラでも手軽に使用できるため非常に重宝されていた。

 取得したばかりのスキルスクロールはスキル値が低いが、合成することにより最大で80まで上げることができる。

 宝物庫には最大80まで合成強化した変装術のスキルスクロールがあり、さらに、このアバターが持つスキル「アイテムマスター」によりスキルの効果が大幅に向上させることができる。


スキル「アイテムマスター」

 94

 →70(成功)


スキルスクロール「変装術」

 80+25=105

 →102(成功)


 光に包まれ、成人男性に変化した。


 メニューを呼び出し俺の姿を見る。

 これが魔王とは到底思わないだろう。そんな見た目になっていた。


《あー あー 私は魔王でござるよ デュフフ》

「あー あー 私は魔王でござるよ デュフフ」


 そして、問題なく話すことができた

 やっぱり、アバターの見た目に影響してセリフの自動変換が発生するのかな?


 装備は「段ボールおじさん」アカの教訓を踏まえて、防御面に特化した装備に変更した。


 逃走(転移)先は・・・ゲーム中では、始まりの町である最も平和な王都"レグルス"。

 その近くにある"狐の森"かな?


 いきなり王都内に転移するわけにもいかない。

 転移先は、できるだけ人目のつかないところが良い。


 場所を決めると、イメージしながら唱えた。


 いざ、出陣(撤退)


魔術「テレポート」!



・・・・・・



 そこには、広大な森と平原、そしてその道に続く壁に囲まれた広大な都市が広がった。

 いかにもなファンタジーの世界である。


 そう、これだよ!

 これこそが、俺が求めていたもの。


 心躍る俺の脳内ではファンタジーBGMが流れていた。


 あんな危機的なダンジョンにこもるより、この広いファンタジー世界を旅して、景色を楽しみ、時にはモンスターを討伐して自由に生活していきたい!


(・・・あれ、ここ、狐の森の上空じゃね?)



・・・・・・


王都「レグルス」


 ここ、王都レグルスは、近隣の国々からは最も平和な王都とも呼ばれている。


 周りには平野や森、洞窟があり、魔物は出現するが比較的弱い魔物しか出ないため人的被害が少ない。


 自然豊かで、農作物の成長に良い気候、鉱山もあり資源も豊富である。

 国の兵力も高いが独裁政治でもない。

 また、戦争の火種になる魔王城からは一番離れている。



――― レグルスの王城「謁見の間」


 朝の剣の訓練が終わった第四王子のシャーロンが、国王に挨拶をしていた。


「父上、おはようございます」


「おお!シャーロンか、今日も朝の訓練に励んでおるのか」


「はい!父上。レグルスは平和でありますが、いつ何時も向上心を忘れず、国民を守って戦えるよう準備しています」


「うむうむ。よい心がけじゃ。お前さんに王権を譲るのもそう早くないだろう」


 国王は笑顔で息子の成長に喜んでいた。


「それにしても、平和じゃのー」


 外からは、朝の鳥のさえずりが聞こえ、心地良い空気が宮廷を吹き抜けていた。


「大変です。国王様。国王様ー」


 突如、謁見の間の扉が開かれて、1人の騎士が入ってきた。


「何事だねジーノくん。許可もなく謁見の間に踏み込もうとは少し失礼だとは思わんかね?」


「緊急時のためご無礼をお許しください。預言者ニーナ様が、狐の森に魔王が君臨すると予言しました」


「なぬ!?」


 預言者ニーナは王都で一番の凄腕預言者で、彼女の預言はほぼ99%は当たっていた。

 ただし、危機的な状況の時のみしか預言をせず、預言の内容もはっきりしないこともあった。


 しかし、今回ははっきりした。

 それも王都近郊にある森にて、魔王が君臨するというのだ。


「急いで兵を集め、王都の守備の強化をしろ! それと冒険者ギルドに掛け合い森の探索の依頼をだせ!」


 王都は、前例のない緊迫した朝を迎えることになった。


・・・・・・



「うぉおおおおおお」


 なぜこうなっただろう?

 俺は今、パラシュートなしでスカイダイビング中だ。


「誰かーーーーーーーーーーー! 助けてくれーーーーーーーーーーーーーーー!」


 おそらく転移先の高さを指定していなかったため、適当な位置(上空)になったのだろう。

 そして、飛行手段がない。(というより置いてきた)

 テレポートの再詠唱時間(リチャントタイム)は分単位で、落下までには間に合うわけない。


 ニュートンは言った。


「私が遠くを見ることができたのは、巨人たちの肩に乗っていたからです」


 巨人たちの肩にも乗らずに遠くを見ていた魔王は、万有引力の法則に逆らえず、狐の森に自由落下した。


 森には、「ドすーーーーん!」という魔王が君臨する音が響いた。


親方ー 空から魔王が(ry



1.必要なもの:逃走するための変装、武装

2.はじめに、逃走地点に転移、……

3.ちくしょう!飛行手段がない! お前はいつもそうだ。

4.この失態はお前の人生そのものだ。お前はいつも失敗ばかりだ。

5.お前はいろんなアカウントに手を付けるが、ひとつだってやり遂げられない。

6.誰もお前を愛さない。

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