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夏至②

 小さい頃から取り柄の無い僕は、得意分野がある人を、ずっと羨ましく思っていた。勉強、運動、図工、絵、テレビゲームだっていい。


 人と上手に付き合える明るい性格でもいい。生まれ持った物だけど、容姿だってそうだ。


 多くは望まない。それらの一つでも良かった。でも僕のポケットには、何も入っておらず空っぽだった。 


 学校の授業で教師は言う。人間は全て平等だと。でも、それは残念ながら嘘だ。たかだか三十五人が在席する一つの教室でも、明らかな序列が存在している。


 教室内で堂々と大声で話したり、笑ったりする事が許されている者。彼等はポケットに、得意分野と言う武器を忍ばせている。


 一方で、小動物のように教室の隅で大人しくしている者達は、ポケットの中に武器と呼べる物が無かった。


 人間は平等では無い。悲しいけど、これが真実だ。そんな事は無いと言える人は、きっとポケットに沢山の武器を入れている人達だろう。


 僕はたまに、妄想する事があった。もし世界が自分と同じような人達だったら。それそこそが、本当の平等が生まれるのではないだろうか。


「同じ性格の人間を、一つの県に集めて」


 僕は白い台の上に浮かぶ、タスマニアデビルの立体映像に指示をする。人間の性格を細かく分けるとキリがないので、四十七都道府県、つまり四十七種類に分ける事にした。


 基本的に乱暴者、普通、大人しいの三種類をベースに、得意分野がある無しで細分化して行く。


 僕が今住むこの県には、僕の特徴をこと細かく設定し、念入りに同じような人間を集める事にした。


 隣の権田藁さんは、指を顎に当て僕を見る。


「なる程、面白い設定だね。稲田君。」


 さあ、これが住民達にとってどんな世界になるのか?僕は自分でも分からなかった。


「住民満足度、二十五点」


 世界創造シュミレーションは、十年が経過した。権田藁さんの前にいるタスマニアデビルが、その点数を発表した。


 権田藁さんは、低い点数にも関わらず。涼しい顔をしていた。権田藁さんは、一人のリーダーに全ての決定権を与える体制を作った。


 そして年金の廃止、その他あらゆる社会保障をカットする設定を行った。当然、低所得者層から、猛反発が起きた。


 立体映像のタスマニアデビルが、両手に画用紙を持ち出した。その画用紙には、住民がデモをする様子が、子供が書いたような絵で表現されていた。


 ······立体映像に画用紙。この理の外の連中は、ハイテクなのかローテクなのかどっちなんだ?


 一方、僕の設定した世界の住民達は、可もなく不可も無くと言った様子だった。点数も五十点。


 犯罪などは、乱暴者が居る県に留まり、その他は治安がすこぶる良かった。大人しい人達は、安心して生活出来ると高評価だが

、一方で、同じ性格の人達ばかりで、退屈という声も上がった。


 なる程。同じ性格の人間達しか居ない世界は、刺激か無くつまらないものなのか。でも、これが僕の理想の世界だ。


 怖い人に怯える事が無く、他人に劣等感を抱かない。僕はもう少し様子を見る事にした。


 三十年が経過した頃、権田藁さんの創った世界は激変していた

。権田藁さんは、東の大国から毎年買っていた国債を一切止め、その予算を人材の育成に全て充てた。


 国債の購入を停止してから、独裁権力を持つリーダーが、不可解な事故で死亡した。権田藁さんが設定した新しいリーダーも、同様に謎の死を遂げる。


 そして国の借金が限界を超え、財政は破綻した。それは僕の世界でも起こった。権田藁さんは、笑いながら僕に言った。


「稲田君。気にする事は無いよ。この国の破綻は、どう転んでも避けられない」


 僕と権田藁さんの住民満足度は、消費税率より低くなった。ハイパーインフレに大量失業。国内は大混乱だ。


 だが、権田藁さんの世界はいち早く立ち直る。人材投資が功を奏し、優秀な人達が国を急速に立て直して行く。


 社会保障をカットされた高齢者層が寿命を迎えると、財務体質は強化された。だが、権田藁さんは眉をひそめる。


 独裁リーダーが、権力を乱用し始めたのだ。私服を肥やし、周囲の部下達も同じ事を始める。


 僕の世界は混乱から、なかなか立ち直れなかった。僕はどうしていいか分からず、精霊を呼ぶ事を考えた。


 今日は七月一日。心を司る精霊が力を発揮する上旬だ。精霊を相手より先に出すと不利。彼方の言葉がよぎったが、今は呼び出す時だと僕は判断した。


 僕は、暦詠唱を唱える。


「初候、玄鳥至つばめきたる!」


 僕の頭上に、紅い着物を着た女性が現れる。長い黒髪をなびかせ、彼女は僕に微笑む。


「ご主人様。またお会い出来て、紅華はこの上ない喜びでこざいます」


 露出の激しい胸と足からは、なるべく視線をずらし、僕も紅華に笑いかける。


「紅華。今回もよろしく頼むよ」


 僕は早速、紅華に助言を求めようとした。その時だった。


「初候!乃東枯なつかれくさかかる


 権田藁さんの暦詠唱が聞こえた。彼の頭上に精霊が出現する。


 黒い長髪、鋭い細目に痩けた頬。男の精霊だ。唐草模様の着物を身に着け、こちらを睨んでいる。


「······おやおや、誰かと思えば、主人殺しの紅い精霊が相手か」


 細目の精霊は、紅華を見るなりそう言った。主人殺しだって?僕は紅華を見る。彼女は細目の精霊の言葉に、肩を震わせ、その表情は血の気が失せていた。


 紅華は砂の上に降り、膝を折りしゃがみ込んでしまった。僕は紅華に駆け寄る。


「紅華!一体どうしたんだ?」


「坊やが紅い精霊の主人か。その女は信用しない方がいい。なにせ、自分の主人を手にかけた女だ」


 細目の精霊は、吐き捨てるように紅華を罵る。


「精霊。そんな事よりこっちを手伝え」


 権田藁さんが命令し、細目の精霊は踵を返した。僕は必死に紅華に声をかける。だが、僕の言葉は、紅華の耳に入っている様子が無い。


「······ご主人様······あの者の言う通りです。私は、仕える主人をこの手にかけました」


 紅華は両腕で、自分の身体を抱きしめるように震えていた。その綺麗な瞳は、焦点が定まっていない。


「紅華······何があったんだい?」


「六十年経過」


 カピバラの機械音が、決闘が後半戦に突入した事を知らせた。こっちはそれ所ではなかったが、権田藁さんは細目の精霊の助言を受け、恐ろしい設定を始めた。

 

 それは、賄賂を送った者、受け取った者は極刑と言う設定だった。そして、権力者を監視する集団を作る。


 権田藁さんの世界は、収賄事件が激減し、権力者達に清心さが戻ったかに思われた。


「全く。権力を持った連中は限度と言う物を知らないな。だが、極刑にするこの設定は使える。後は······」


 権田藁さんが、細目の精霊に耳打ちする。その直後、細目の精霊は僕達の前に移動し、右手を差し出す。


 その途端に、紅華が苦しみ始めた。この細目の精霊、紅華の精神を攻撃しているのか?


「止めろ!君は紅華に、何か恨みがあるのか?」


 僕は細目の精霊と、紅華の間に割って入る。細目の精霊は、呆れた表情になる。


「坊や。これは一族同士の戦いだ。古来から、幾度と無く繰り返してきた事だ。その紅い精霊とは、昔何度か戦った事がある。それだけの事だ」


 精霊同士の因縁。この細目の精霊は、昔の紅華の主人を知っている。そこで何かが起きたんだ。


「稲田佑!その精霊はもう駄目よ。精神の消耗を避ける為にも、帰らせて!」


 彼方が大声で僕に警告する。駄目だ。ここで紅華を帰らせたら、二度と彼女は立ち直れない気がした。僕は細目の精霊に再び叫ぶ。


「紅華を攻撃するのは止めろ!するなら僕にしろ!」


「坊やは変わった主人だな。まあ、望みは叶えてやるよ」


 細目の精霊の手が、僕に向いた。その瞬間、僕の頭は割れそうに痛くなる。こ、紅華は、こんな苦しみを受けていたのかか?


「ご主人様!」


 紅華が我に返り、僕を見る。よし。まずは彼女の自失を取り戻したぞ。


「坊や。この紅い精霊を使い続ければ、いずれお前もこの女に寝首を寝首を掻かれるぞ!」


「僕は紅華を信じる!」


 僕は頭を抑えながら立ち上がる。頭の痛みのせいか、景色が歪んで見えた。


「僕が信頼するのは、今の紅華だ!過去に何があっても関係ない。主人殺しが真実でも、何か理由があった筈だ。例え理由が無くても、それは変わらない!」


「······御主人様······」


 細目の精霊が、身体を乗り出すように前傾姿勢になる。


「なら好きにするがいいさっ!」


 頭痛の痛みが、更に増していく。僕は立っていられず、片膝を砂の上に着いた。


 ······あれ?頭の痛みが無くなった。目の前を見ると、紅華の背中が見えた。彼女は僕に振り返り、微笑する。


「本来なら、御主人様を守るのが私の務め。それにも関わらず、役目を果たせず、恥ずかしい限りです」


「紅華······良かった。大丈夫かい?」


「······はい。ご主人様。私は自分の務めに、もう迷いを持ちませんわ」


「開き直ったか!この主人殺しが!」


 細目の精霊が、標的を僕から紅華に変えようとした。


「紅華。あの細目の精霊との過去の戦績は?」


 僕の問いに、紅華は僕が見た事のない力強い笑顔を見せた。


「二戦とも私が勝利しましたわ」


 紅華の自信に満ちた言葉に、僕は彼女の勝利を確信した。


「抜かせ!三度は負けんぞ!」


 細目の精霊と紅華が、互いに手のひらを差し出す。二人の周囲に、火花のような音と光がいくつも起こる。


 二人の表情は苦悶に滲む。さっき僕が苦しんでいた頭痛を、相手にかけているのだろうか。僕から見て、二人は互角に見えた。


 その時、紅華に変化が生じた。彼女の黒い瞳が、紅色に染まっていく。そして身体の周りには、紅い蒸気のような物が噴き出す。


「下がりなさい。夏至一族の精霊!」


 紅華の両目が大きく見開く。


「うがあああっ!!」


 細目の精霊は両手で頭を抱え、砂の上に落下した。その精霊を、権田藁さんが冷たい目で見る。


「思ったより、使えない精霊だな。稲田君の存在と住所を探し出した、次候の精霊の方が良かったか」


 紅華を呼び出した負担と、さっきの頭痛も重なって、僕は酷い二日酔いのような気分だった。いや、お酒飲んだ事は無いけど。


「御主人様!大丈夫ですか?」


 紅華が僕を支えるように寄り添ってくれる。あ、あんまり近づかれると刺激が強すぎて困る。


「稲田佑!ボサっとしてないで!まだ決闘中よ!」


 彼方が僕の頭を叩く。ひ、酷い。さっきまで頭痛で苦しんでいたのに。でも、彼方の言う通りだ。僕は紅華にシュミレーションの説明をして、助言を求めた。


 だが、紅華は申し訳無さそうに、その細く綺麗な首を横に振った。


「御主人様。人の世はいつも同じでこざいます。権力者の下に、虐げられる民がいる。この関係は、永久に変わりません。まして、誰もが満足する世など、存在致しませんわ」


 きっと紅華は、精霊として永くこの世を見てきたのだろう。たかだか十七年しか生きていない僕に、彼女の答えに反論出来る筈も無かった。


「くそ!なんでこうなる?」


 権田藁さんの声が聞こえてきた。彼が冷静さを欠く姿を、僕は初めて見た。


 権田藁さんは、収賄の罪を本人だけでは無く、その家族にまで及ぶ罰を作った。それでも腐敗は無くならなかった。


 シュミレーション世界が、八十年を超えた頃、権田藁さんの世界で暴動が起きた。権力者を監視する集団が、監視の対象を国民に広げ、その権力を乱用したのだ。


 逮捕、監禁、暴行が横行し、監視社会になった人々は抑圧された。立体映像のタスマニアデビルが、その様子が描かれた画用紙を持つ。


 一方、僕の世界は停滞が続き、満足度も低い。一体、どうしたら皆が満足出来る世界が出来るんだ?


「······彼方。彼方は、どんな世界だったらいいと思う?」


 僕は彼方に質問する。彼方は迷う事なく即答した。


「あれが手に入れば、これが不満になる。人間の欲を満たす世界なんてないわ」


 ······確かにそうかも知れない。自分と同じ性格の人間だけの世界。心は平穏に満たされても、退屈という不満が生まれる。


「······でも、私にはそんな世界があるわ。誰もがお腹一杯にご飯を食べれる世界。私はそんな世界なら、他に何も要らない」


 彼方が、切なそうな表情で答える。どう言う事だろう。以前、彼方が白米を見た時、泣いた事と関係あるのだろうか?


「稲田君!取引だ。君に渡した手紙の内容を、もう一度考えてくれないか?」


 権田藁さん僕に不正を持ちかける。その声色は、明らかにさっきまでの余裕を失っている。僕は首を横に振る。


「いいかい?稲田君。私は、三千人の従業員を抱える経営者だ。私の存在が消えれば、従業員とその家族が路頭に迷うんだ!」


 さ、三千人とその家族?僕が勝つと、一体どれくらいの数の人達が困るんだ?


 ······駄目だ。考えるだけで足が震えてくる。心が折れそうになった時、僕の両肩に誰かが手を当てる。


「御主人様。どんな答えを選ぼうとも、私は御主人様の味方ですわ」


 僕の右肩に手を添えた紅華が、優しく僕に微笑む。そして左肩に手を載せたのは、彼方だった。


「稲田佑。腹を括りなさい。私達はもう、引き返せない所にいるのよ」


 彼方は迷いのない瞳を、僕に向ける。僕の頭には、無数の言葉が次々と浮かんでくる。責任、行動、大勢の人達、未来。


「稲田君!決断するんだ!君は、何千人もの人間の未来を奪うのか?」


「出来ません!」


 僕は叫んだ。両足の震えが、いつの間に止まっていた。


「······ごめんなさい。権田藁さん。僕は未来の世界を、この世界のように砂漠にしたくない。だがら、数千人の人達を犠牲にします」


 僕はわざと、使いたく無い言葉を選んだ。それは自分のした事、これからする事に逃げ道を無くす為だった。


「······これだから、税金も払った事のない子供は」


 権田藁さんは、もう僕に構ってる暇は無いとばかりに、シュミレーションに集中し始めた。


 僕も最後の設定を命令する。それは、人々に自給自足を奨励する設定だった。この国にある休耕田を、意欲のある人達に無料で分け与える。


 農家の人達にその指導を有償で依頼し、同時に地方への移住も支援する。すると、長時間労働で疲れ果てた人達を中心に、移住する人が増加していった。


「百年経過。決闘を終了致します」


 カピバラがシュミレーションの終わりを告げた。住民満足度の集計に時間がかかり、僕等は暫し待たされた。そうしていると、紅華が僕に近づく。


「······御主人様。お耳汚しに、聞いて頂けますか?」


 僕は頷いた。紅華は僕の隣に佇み、静かに語り始めた。


 数百年前、紅華は当時の清明一族代表に仕えていた。その代表は温和な性格で、紅華にも優しく接し、二人は強い信頼関係にあった。


 だが、代表は病に冒され、耐え難い痛みに苦しんでいた。代表は紅華に懇願した。紅華の力で、自分を楽にして欲しいと。 


 紅華は悩み苦しんだ末、主人の望みを叶えた。主人の精神を操り、意識を失わせた。水分も採れなくなった身体は衰弱して行った。


 代表は痛みも無く、安らかに逝去した。主人の頼みとは言え、紅華はそれからずっと苦しんでいたんだ。


「······ありがとう。そしてごめん」


「え?御主人様、今なんとおっしゃいました?」


「お礼とお詫び。その主人は、紅華にきっとそう言いたかったんじゃないかな?」


 僕のその言葉を聞いた瞬間、紅華の瞳から涙が溢れた。彼女は静かに僕の胸に抱きついた。僕も紅華の肩を抱く。


 紅華の肩が小刻みに震えている。彼女はきっと、僕を通して昔の主人に身体を預けているのだろう。


「······その方は、今際の際に、名もなき私に名を付けてくれました」


「名前?」


「はい······紅華と······」


  遠い昔の僕の先祖は、精霊の彼女に名を送った。それは、僕が考えた名と同じだった。これは、只の偶然だろうか?


 僕は考えるのを止めた。偶然でも何でもいい。彼女に名を付けたご先祖様に、僕は感謝した。



 住民満足度の集計が終わり、最終点数が発表される。僕と権田藁さんは、互いのタスマニアデビルの立体映像に注目する。


「夏至一族代表、三十二点。清明一族代表、三十七点。よって、清明一族代表の勝利と致します」


 ······か、勝った。それにしても僅差だった。結局、僕も権田藁さんも、どこかの内閣の支持率より低い点数だった。


 うなだれる権田藁さんの前に、僕は近づき頭を下げる。


「権田藁さん。迷惑をかけてすいませんでした」


「······やはり君は子供だな。一つの失敗で悔やんでいたら、経営者は務まらんよ」


 権田藁さんは、口の端を歪めながらも、タフな表情を見せた。僕は権田藁さんに、暦の歪みを正すように命令し、その指導監督をタスマニアデビルに一任した。


 権田藁さんが、タスマニアデビルと共に歩きだそうとした時、彼が僕に小声で耳打ちした。


「稲田君。私は次候の精霊を使って、君を探し出した。私の決闘相手と、その協力者を探せと。だが、あのセーラー服の娘の事は何も分からなかった」


 やはり精霊を使って僕を探し出したんだ。でも、彼方の事が分からなかったとは、どう言う事なんだ?


「これは私の推測だが、彼女はこの世界に存在しない人間だ。彼女には、気をつけたほうがいい」


 存在しない?僕は益々分からなくなった。権田藁さんは、精霊を使ってまた新しいビジネスをすると言い残し、消えて行った。


「世界を創造した気分はどう?稲田佑」


 純白のセーラー服を着た少女が、僕に声をかける。この世に存在しない······権田藁さんの言葉のせいか、なぜか彼方が遠い存在に感じた。


 カピバラを一瞥すると、また彼方を見つめている。彼方は一体何者で、あのカピバラとの関係は何なんだ?


 酷い二日酔いの気分のせいか、僕はふらついた。その肩を、彼方が支えてくれた。そうだ。彼方が何者であっても、僕を支えてくれる事に変わりは無い。


 もう、後戻り出来ない所に私達は居る。彼方の言葉が僕の頭に浮かぶ。僕は、僕達は進むしかないんだ。その先に、どんな事実があったとしても。


 砂漠一面のこの世界は、前回の青空とうって変わって、薄雲を空に広げていた。その薄雲から見える太陽は、頼りなく見えた。


 




 



 




 


 


 




 

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