(165)涙が止まらない日
「カチカチ、カチカチ」ミミアント
ダッダダダっと登る登る。
でも、今更ながら思うことがある。
何の為に僕は、上に向かうのだろう、下で戦いが終るのを待てばいいじゃないか?
何で、何の為に、息子達が死ぬかもしれない、なのに鼓舞位しかできない僕が、なぜ?
登って息子が危険でも、僕は弱い、何の役に立つのだ!!チクショウ、何でだ!!
なぜか、モンスターの息子達が愛しい、死んで欲しくない、ミイムもチャムも大事だ。
だが、カイリと憎たらしいはずの、ゴブリンのアニも大事だ、なんだ、何でだ、涙が止まらない。
「カチカチ、カチカチ」ミミアント
それでも、ミミアントは、止まらない。
もう少しで、頂上だ。
本当死体だらけだ、ミミアントの死体より、ゴブリンの死体の方が人間みたいで、気持ち悪い。
誰も死なないで・・・・
・・・お願い・・・・
「カチカチ」ミミアント
「ギィ・・」敵ゴブリン
「キューーー」ミミアント
「◇△※・・ギィ・・・・」敵ゴブリン
「・・・・・カチ」ミミアント
頂上に着いた。
頂上は、更に酷い状況だ!
敵のゴブリンもミミアント達も中途半端に傷付き、死を待つ者ばかりだ。
ダメだダメだ、本当に、涙が止まらない。
脱水状態になっちゃうじゃないって位出てる。
あ、あの籠は!
僕は、見覚えがある籠の所にいた。
「あああぁぁ、ああ、ああぁ」
「ギィ※・・#▲」ゴリリン
ゴリリンは、安心した表情だ!
籠を守るように膝をつきながら至る所に尖った枝や、ボロボロのナイフや斧が刺さったゴリリンの姿
僕は、ミミアントから、降りゴリリンに駆け寄った。
「な、何でだよ、何で、そ、そうだ」
僕は、籠から、ヤン樹の実を探し見つけて、渡そうとした。
「早くた」
「バタ」
ゴリリンの巨体が前のめりに倒れた。
「やだ、やだやだやだ、食べろ、食べろよ」
僕は、ゴリリンの口を開けようとしたがガッチリ噛み合っていて開かない、息がない
「な、なんでなんでぇ」
気持ちよく寝てる顔のまま、動かない。
「キューーー」ミミアント
心配するように鳴く蟻
「こんな物ぉぉ・・・・うぅぅ」
僕は、ヤン樹の実を投げようとしたが、思い止まった。
「な、なんでなんでこんな、こんな、籠に命を賭けるんだ、チクショウ、チクショウ」
僕は、また泣いていた。
そして、いつの間にか、ゴリリンの側で眠っていた。
そう、戦場のど真ん中でだ。
ゴリリンは、いい奴だった、言葉は通じなかったが、ドワーフ村では、僕が喜ぶ物を沢山持って来てくれた。
たまにハズレはあったけどね。
鼻息荒くして、僕の所に来たときは、ビックリしたけど、アニに、殴られションボリしてる姿は、ちょっと可愛かった。
ゴリリンがデカイ籠を見つけた時は、一緒に喜びめちゃくちゃ褒めた。
減るもんじゃないし、ほっぺにキスもした、それで興奮して、ゴリリンが僕を抱きしめようとした時、またアニに殴り跳ばされてたなぁ~。
アニも、若干笑いながら殴ってたから、息子ながら、嫉妬したな、あれは。
まあぁ、その日から、ゴリリンは、最初の籠を手放そうとは、しなかったな。
もう、ゴリリンと会えないっと思うと悲しい…。




