待ち針の穴
いつかの裁ち鋏
古めかしい持ち手
綺麗な刃先
皺を作りながら
裁縫していた姿が
徐々に小さくなる
それが分かった時に
同じことは
二度と出来ないのだと
分かってしまった
脈々と受け継がれてきた
大切かもしれない物達は
受け継ぎ手が無くて
消えていく
不要だと言われながら
シールを貼られる
さながら
甲子園の地方予選
最後のバッターみたいだ
チームの敗戦ではあるが
自分で終わったことは
強く頭に残る
きっと
次の世代に
言われてしまう事があるだろう
不要なのは
あなた達の考え方だったなと
小さく丸まりながら
縫われた服は
現物は消えて無くなり
思い出の中で着ていた
服は何故か
勝手に大きくなっている
時々
思い出したかのように
夢の中でも着た
それはそれは
綺麗な顔だった
お互いに
昔からある鏡に映った情景は
人の何かを感じている
古さを感じ
「駄目だ」と言うが
新しい事も
同じように
駄目になるだろう
順番を待つみたいに
言われ続けているのだ
仕方ないだろう
世界に正解は無い
継続すると決めた事が
残ってきただけだ
それに善し悪しは無い
合わないという感覚も無い
継続すると決めた物に
合わせてきたからだ
文章を書く事に似ている
つまりは
そういう事だろう